【第126回】
発達障害
最近、「発達障害」という言葉を診療の場面に限らず耳にする機会が増えました。文部科学省のデータによると、公立小学校で「注意欠如・多動症(ADHD)」の診断を受け、通級指導を受ける児童数は20,626人(令和元年)から34,654人(令和5年)へと約1.5倍に増加しています。この理由として、発達障害の認知が進み受診機会が増えたことや、学校環境・SNSの普及といった子どもを取り巻く環境の変化など、複数の要因が考えられています。
発達障害は、自閉スペクトラム症(ASD)やADHDに代表される脳機能の発達に関わる障害です。コミュニケーションや対人関係が苦手で、その行動や態度から「変わった人」と敬遠され、社会で孤立してしまうことも少なくありません。一方で、特定の分野で優れた能力を発揮することもあり、周りから見るとアンバランスで理解されにくいという側面もあります。
精神科の医療現場では、まず丁寧な問診を行い、必要に応じて心理検査も交えながら正確な診断を行います。ASDに見られる「こだわり」やADHDに見られる「不注意」などは誰しも多少は持っているため、それが日常生活にどの程度支障をきたしているかを確認します。なお、未成年のうちは学校生活や成長に伴って特性との付き合い方が変化することもあるため、診断はより慎重に行われます。
治療については、ADHDには治療薬がありますが、ASDなどには直接的な治療薬がありません。そのため、自身の特性を理解し、うまく付き合いながら生活する方法を一緒に考えていくことが中心となります。うつ病などの併存疾患や二次障害が見られる場合は、それらに対応した治療を併せて行います。
昭和から令和になり、集団の調和だけでなく「個」の自立や成果がより重視される時代になりました。その分、周囲になじめないと孤立や生きづらさを感じやすいリスクが高まっている印象を受けます。発達障害への理解を深め、当事者やご家族が孤立しないよう、社会全体で支える体制をつくっていくことが極めて重要です。
私は杉並区保健所が主催する「発達障害のご家族向け教室」で年2回、講師を担当しております。ご興味のある対象の方は、ぜひご参加をお待ちしております。
令和8年10月
医療法人社団野崎クリック(https://nozaki-clinic.or.jp)
野崎 純



















