病気の話

【第89回】
ヒトメタニューモウイルス感染症について

はじめに

 今年は、保育園、幼稚園でかぜが大流行しました。その原因の一つがヒトメタニューモウイルス感染症です。聞きなれない病名ですが、この感染症について説明します。

ヒトメタニューモウイルス感染症とは

 human metapneumovirusという名前のウイルスがひきおこす、乳幼児に多い急性呼吸器ウイルス感染症です。RSウイルスと似た症状(咳、鼻水など)をひきおこします。参考(【第24回】RSウイルス感染症)

感染しやすい年齢

 2歳までに約30%、5歳までに約75%、10歳までには、ほぼ100%が一度感染すると言われています。感染力が強いウイルスなので、一度感染しても、また感染することがあります。大人になっても感染する可能性があります。ご高齢の方は、特に注意が必要と言われています。

症状

 咳 ゼイゼイ 鼻水 発熱(5日から7日間続くこともあります)。
 咳などの症状が治まるまでに、2、3週間かかることがあります。

感染の仕方

 咳、くしゃみ、話しているときに飛ぶしぶき、ウイルスがついた手やその手で触ったもの(ドアノブ、おもちゃなど)から感染します。

治療

 ヒトメタニューモウイルスに効く薬はありません。
 予防できるワクチンも今のところありません。
 発熱があって、つらそうなときは解熱剤、たんが絡んで苦しそうなときは、去痰剤です。
 鼻水がかめないお子さんは、鼻水を吸い取ってあげると少し楽になります。
 咳がひどいときは、1歳以上なら、はちみつがおすすめです。1歳以下のお子さんの場合、ボツリヌス症という感染症を起こすことがあるため、絶対にはちみつを飲ませないでください。

注意すること

 胸やお腹をぺこぺこさせて息をしているとき。
 ゼイゼイ、ヒューヒューの音が強く、息苦しそうなとき。
 せき込みがひどく、眠れない時。
 水分がとれず、ぐったりしているときは、もう一度診察を受けましょう。

登園のめやす

 熱が下がって元気で、ゼイゼイなどがなく、食事がとれていれば、登園できます。


 
令和5年9月
宮下小児科医院
佐々木 礼子
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