【第60回】
飛蚊症とは
はじめに
飛蚊症とは〈ひぶんしょう〉と読み、字のごとく目の前にあたかも蚊が飛んで見えるような症状が典型的なものです。ほとんどの飛蚊症は、加齢などによる生理的な変化でおこる現象で、放っておいても大丈夫なものです。しかし、まれに網膜剥離など怖い病気が原因の場合もあり注意が必要です。
症状
目の前に何かが飛んで見えるような症状が、飛蚊症の典型的な症状です。飛んで見えるものは黒い点々や、髪の毛のようなもの、墨を流したようなものなどと様々です。
飛んで見える物は眼球を動かすとそれにつられて移動し、白い壁や空のような明るい所を見ると特に目立つのが特徴です。
原因
飛蚊症の原因は、眼球内にもともとある硝子体(図1)という透明なゼリー状の物質に濁りができ、それがカメラのフィルムにあたる網膜に影となって映ることによっておこります。
硝子体はゼリー状のため、眼球を動かすと濁りもふわふわとつられて動き、目の前に何かが飛んで見えるような症状になります。
硝子体は加齢により、ゼリー状であった硝子体が液状になったり、収縮したりする変化がおきます。この変化の際に硝子体内に濁りがおき、飛蚊症の原因となることが多いです。この変化は近視が強い場合は若い人でも起こりうる現象です。
また、まれですが硝子体が収縮した時に網膜も引っ張り、その拍子に血管を傷つけ出血したり(硝子体出血)、網膜がはがれてしまう病気(網膜剥離)を起こしたりすることがありますが、その時にも硝子体に濁りがおきます。その他、眼球内に炎症をおこす病気(ぶどう膜炎)によっても、硝子体に濁りがおき、飛蚊症の原因となることがあります。
検査
飛蚊症の原因が老化現象による生理的なものか、治療が必要な病気によるものかは眼底検査を行うことによってわかります。眼底検査は点眼薬でひとみ(瞳孔)を広げ、眼球内の網膜や硝子体の状態を詳しく調べる検査です。しばらくの間(4-5時間)点眼薬の効果が続くため、その間は普段よりまぶしく感じたり、ぼやけて見えにくくなりますが、痛みのない検査です。
治療
老化現象による飛蚊症の場合は、硝子体内の濁りも少しずつ眼球内で移動するので、いつの間にか目立たなくなったり、慣れてくることが多く、特に治療の必要はありません。
硝子体出血や網膜剥離やぶどう膜炎などが原因での飛蚊症の場合は、お薬の治療や手術が必要となります。
最後に
飛蚊症はほとんどのものが加齢による生理的なもののことが多く、様子をみるだけで大丈夫なものがほとんどです。しかしまれではありますが、眼球内の出血や網膜剥離などが原因となっている場合もあり、急いで治療しなければ最悪失明してしまう可能性もあります。
ご自分では治療が必要な飛蚊症か、様子をみても大丈夫な飛蚊症かはわかりません。飛蚊症の症状がおきたり、今まで感じていた飛蚊症が急に悪くなった場合は、必ずお近くの眼科を受診することをお勧めします。