病気の話

【第30回】
緑内障

1. 緑内障とはどんな病気?

 緑内障とは視野(見える範囲)が欠けてくる進行性の病気です。しかも、一度欠けてしまった視野は元に戻すことはできません。
 眼球は、大気圧に負けないで球形を保つために、内側より水分による圧力をかけています。それを眼圧といいます。
 また、人の眼には神経線維が120〜150万本あり、年齢とともに年間5千本位は自然に消失していきます。
 この眼圧が高くなり続けると、光の情報を眼から脳に伝える視神経が圧迫されて 変形をおこしてきます(視神経乳頭陥凹拡大)。 それにより中を通る神経線維が損傷をうけると(網膜神経線維層欠損)、視野が欠けてくるのです。
 眼圧の正常値は21mmHg(ミリメートル水銀柱)未満ですが、視神経が弱いと眼圧が正常であっても同様の変化がおきてしまいます。 これを正常眼圧緑内障といいます。
 緑内障には人種差があり、正常眼圧緑内障は東洋人しかも日本人に多いのです。
 2000年〜2002年に日本でおこなわれた大規模な疫学調査(多治見スタディ)では、 40歳以上の20人に1人(5%)が緑内障に罹患している事がわかりました。 そして加齢とともに増加し、70歳以上では8人〜10人に1人といわれています。 近年では糖尿病網膜症を抜いて、日本での中途失明原因第1位の疾患となりました。
 緑内障は治らない病気ですが、”進行するまで自覚症状に乏しい”という特徴があります。 しかも、日本では正常眼圧緑内障のタイプが最も多く、一般の健康診断などで行われている眼圧測定の項目だけでは 9割の人が見逃されてしまいます。
 緑内障でありながらいまだ治療を受けていない人が非常に多く潜在しており、生涯にわたり生活に困らない見え方を維持するためには、 なにより早期発見・早期治療が大切な事となります。

2. 緑内障はどうやって診断する?

 緑内障診断には眼圧や視野検査(見える範囲を調べる検査)は欠かせませんが、 もっとも早期発見に重要な検査は眼底検査です。 視神経乳頭陥凹拡大や網膜神経線維層欠損などの特徴的な所見があり、それに対応した視野異常があれば確定診断となります。
 最近では、光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)という 眼底を精密に調べられる装置が開発され、以前より簡便かつ早期に緑内障を発見できるようになりました。

3. 緑内障の治療はどうする?

 現在、緑内障治療において唯一確実な治療は眼圧下降(眼圧を下げること)のみです。
 統計学的な眼圧の正常範囲は10〜20mmHgとされていますが、視野障害が進行しにくくなる適切な値(目標眼圧といいます)は 患者さんの状態によりさまざまに異なります。
 まずは目標眼圧を下回るように点眼による治療を開始しますが、治療経過が長くなるにつれて複数の点眼薬を併用していく場合が多くなります。
 点眼治療によっても緑内障の進行は完全に止めることはできませんが、長生きしても困らないレベルの見え方を維持できるように、  生涯にわたって眼圧を調整していく必要があります。
 点眼治療では効果が不十分であると予測される場合には、眼圧をより下げるために手術治療を選択しなければならないこともあります。

4. 以下の方は特に一度眼科受診をお勧めします!

 繰り返しますが、緑内障では早期発見・早期治療が重要です。
 40歳以上の方、近視が強い方、ご家族に緑内障の患者さんがいらっしゃる方は、特に一度眼科を受診することをお勧めします。


 
平成30年7月
阿佐ヶ谷眼科 院長 佐藤 和義
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