【第98回】
慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)
腎臓とは
腎臓は背中の腰骨の上に左右対称に2個あります。
形はそら豆に似ていて、握りこぶしぐらいの大きさで1個、約150gの臓器です。
体の臓器のなかで最も血液の流れが豊富な臓器で血液の量は1日150Lとされています。
腎臓の働きは
体内の老廃物をろ過して尿として排泄し血液をきれいな状態に保ちます。
水分量やミネラルの調整をしています。
赤血球の産生や血圧の調節に必要なホルモンを作ります。
カルシウムを吸収させるのに必要なホルモンを作り、骨を丈夫に保っています。
腎臓の働きが悪くなると
足や顔のむくみ、血圧上昇があらわれます。
尿が泡立つこともあります。
悪化すると吐き気やだるさ、貧血、動悸があらわれます。
CKDの定義
下記のいずれか、または両方が3か月を超えて持続することです。
(1)尿異常、画像診断、血液検査、病理診断で腎障害の存在が明らか。
特に0.15g/gCr 以上の蛋白尿の存在が重要です 将来の腎機能低下を予知するからです。
(2)糸球体ろ過量(glomerular filtration rate: GFR)が60未満に低下。
CKDを予防するために
生活習慣を見直し腎臓に負担をかけないようにしましょう。
CKDの発症には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、肥満、過度の塩分摂取、過度の飲酒、喫煙、高齢、蛋白尿、腎疾患の家族歴、急性腎障害の病歴などが関わっています。
生活習慣病の治療を適切に開始し治療中断をしないようにしましょう。
最近は薬や漢方薬やサプリメントによる腎臓障害も注目されていますので気を付けましょう。
CKDを早期に発見するために
尿検査、血液検査を年に1回はかかりつけ医で受けましょう。
尿蛋白(1+)以上や尿蛋白(±)が2年連続見られた場合、
eGFR45未満や、40歳未満でeGFR60未満はかかりつけ医に相談しましょう。
CKDを悪化させないために
成人の約8人に1人はCKDと推計されています。
生活習慣病が増えて高齢化が進んでいることが原因です。
CKDは末期腎不全へ進行するだけでなく、心血管合併症(心筋梗塞、脳卒中)の危険因子にもなっています。
早い段階での治療介入が腎臓だけでなく心臓や脳を守ることになります。
生活習慣病で治療中の場合はしっかり治療を継続し専門医療機関を紹介されたら必ず受診しましょう。
*は患者さん自身で努力する項目です。グレイの項目はまだ証拠が十分ではありません。
(わが国の慢性透析療法の現況(2022 年 12 月 31 日現在)
透析会誌 56(12):473〜536,2023)
1998年に糖尿病を原因とする腎臓病が慢性糸球体腎炎を追い越しました。
さらに2018年に高血圧や動脈硬化症による腎硬化症が2位に浮上しました。
糖尿病によるものは最近の治療の向上による割合としては減少傾向にあります。
中村医院
藤巻 道孝