病気の話

【第66回】
乗り物酔いを軽くするための訓練

 乗り物酔い(動揺病)に対する予防対策や薬物治療はよく紹介されています。

 でも、それらは一時的な方法(その場しのぎ)であって、根本的な解決ではないような気もします。“乗り物酔い”に対して、訓練をして、慣らすことにより、乗り物酔いをしにくいような体質を作ることが根本的な治療につながると考えられています。実際、訓練を効果的に施行することによって、ある程度酔いにくい体を作ることができます。
 乗り物酔いには“慣れ”の現象があるといわれています。同じような動揺刺激を受けて乗り物酔いを繰り返し、気持ち悪さと嘔吐を体験していくうちにだんだんと酔わなくなっていきます。
 この慣れの現象を利用することにより、“酔いにくい体質”をつくることが、根本的な対策だと思います。

 具体的に何をするかというと・・・

1. 回転する刺激を与えてみる
回転するイス、あるいは公園にある回転する遊戯施設を利用して回転する刺激を1日に何回も毎日のように与えてみる。

2. 重力の刺激を利用する
公園のブランコに乗ることを頻繁に行う。また、シーソーやエレベーターに乗ることも積極的に施行してみるとよい。

3. 視覚的に刺激を与えてみる
眼の前を動くものを努力して見続けることが訓練となると考えられる。人ごみの中を積極的に往来する、また、電車・自動車の動きを良く見るなど、動きのあるものをできるだけ見るようにすることを頻繁に繰り返してみる。

 このような訓練は、どこでも簡単にできるものが多いですが・・・酔いやすい人にとっては酔いの症状を伴うために、始めのうちは恐怖感を克服することが一つの関門になります。とくに子どもたちの場合は辛い症状を避けたいという気持ちが強くて、訓練がなかなか進まないようです。でも、短い時間でも回数を増やして頑張っていけば効果はだんだんと表れてくるはずです。日数をかけながら徐々に強い刺激を与えていくようにすればよいと思います。


 
令和3年9月
はまだやま耳鼻咽喉科・めまいクリニック(http://www.hamadayama-ent.com/
小泉 康雄
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