【第19回】
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症はどんな病気?
図1
糖尿病により血糖値が高い状態が続くと、網膜に酸素を供給している血管の流れが悪くなり酸欠状態になってしまいます。
次にそれを補おうとして新生血管と言うもやしのような血管が生えてきます。
しかし新生血管は非常にもろいため、簡単に眼底出血を生じるようになります(図1)。
眼底出血を繰り返すうちに、増殖組織と呼ばれるガムのような膜が張ってきて、やがては網膜剥離や緑内障を来たして失明に至る危険性があります。
眼科ではどんな検査をするの?
図2
眼科では視力、眼圧のほか、瞳孔を開く点眼薬を用いた詳しい眼底検査を行います。 通常の眼底写真のほか、最近では網膜の断層写真を撮影できるOCT(光干渉断層計)という特殊なカメラが用いられるようになりました。 OCTは網膜のむくみ(浮腫)を早期に検出できるため診断に役立ちます。 他に造影剤を注射して網膜の血管の状態を直接的に調べる検査も行われます(図2)。
どんな治療法があるの?
治療の基本は血糖コントロールですが、進行した網膜症では次のような治療が行われます。
1)網膜光凝固術:酸素不足を起こした網膜にレーザー光線を照射して固める方法です。酸素不足を改善し、新生血管の発生を抑えます。
2)硝子体注射:新生血管の発生を抑える薬を目に注射する新しい治療法です。レーザー治療が難しい黄斑部の浮腫に対して行われます。
3)硝子体手術:出血を繰り返す場合や網膜剥離を生じている場合は硝子体手術が行われます。
繊細な手術器具を用いて直接出血や増殖組織を取り除きます。
糖尿病と言われたら気をつけることは?
糖尿病網膜症は最近まで我が国の失明原因第1位となっていましたが、検査・治療法の進歩により失明に至ることは減ってきました。 しかし、糖尿病網膜症は初期には自覚症状がほとんど無く、自覚症状が出始めると急激に視力を失う恐ろしい病気であるため、 厳密な血糖コントロールに加えて早期から眼科で定期的な検診を受けることがとても大切です。