【第32回】
食物アレルギーとは
食物アレルギーとは食べ物を食べたり、吸い込んだり、肌についたり、時には注射などにより引き起こされる免疫の働きで 不快な症状が出ることをいいます。 いくつか分類があり、一般的な食物アレルギー以外にも新生児・乳児消化管アレルギー、 食物アレルギーに関与する乳児アトピー性皮膚炎や口腔アレルギー症候群、食物依存性運動誘発アナフィラキシーといった特殊なタイプもあります。 原因となる食物は、乳児期では鶏卵、牛乳、小麦が多く、年齢とともに魚類、魚卵、甲殻類、ピーナッツ、そばなどが増えてきます。 ここでは一般的な食物アレルギーについてお話させていただきます。
症状
多くは摂取後数分から2時間以内にみられます。 皮膚症状が最も多く、約9割に蕁麻疹や湿疹などがみられます。 次いで呼吸器症状(咳、ゼーゼー、のどの違和感など)、粘膜症状(鼻汁、結膜充血など)、 消化器症状(嘔吐、下痢、腹痛など)、神経症状(不穏、意識障害など)、循環器症状(血圧低下、蒼白など)がみられます。 複数の臓器にわたり症状がみられる場合はアナフィラキシーの可能性があるため、すぐに受診するようにしてください。
診断
症状が出たときのエピソードがとても大事です。 『何を食べた』、『食べてどのくらい』、『どんな症状』、『今までにも食べたことがあるか』といった情報がとても大切になります。 血液検査は最も普及されている検査で、非常に参考になりますが、 “陽性=アレルギー”とは必ずしもならないため、その評価には注意が必要です。 特にアレルギーのスクリーニングを目的で検査を行った場合は、不要な除去にもつながりますのでかかりつけ医とよく相談してから行うことが大切です。 食物経口負荷試験は最も診断価値が高く、疑われる食物を摂取し、誘発症状を確認する検査です。 確定診断および耐性獲得の確認を目的として行われます。 その他にも皮膚プリックテスト、好塩基球ヒスタミン遊離試験、食物除去試験などがあります。
治療
原因となる食物(アレルゲン)の除去が治療の中心となります。 症状を誘発しない量や調理によって摂取できるものは、除去をせず摂取を勧めることもあり、 除去は必要最小限に努めることが大切です。 乳児期〜幼児早期に多い鶏卵、牛乳、小麦、大豆は自然に耐性化(食べられるようになる)することが多いため、 除去開始後は定期的に血液検査や食物経口負荷試験等を行い、できるだけ早く耐性獲得を確認することが重要になってきます。
Q:どんなときに食物アレルギーを疑ったらよいですか?
A:何かを食べた後で前述のようなアレルギー症状が出たときに食物アレルギーを疑います。 離乳食を開始する前や保育園に入園前にアレルギー検査をしたいと相談されることがありますが、 血液検査は必ずしも症状と一致するわけではなく、“陽性でも食べられる”、“陰性でも症状が出る”といった場合もあり、 血液検査結果だけで食物アレルギーの診断とはなりませんので注意する必要があります。
Q:アトピー性皮膚炎との関連は?
A:以前はアトピー性皮膚炎を見ると、食物アレルギーの関与を強く疑い除去食を進められたりしていました。 しかしながら、最近ではアトピー性皮膚炎と食物アレルギーは別々の病気と捉えられるようになり、そ れぞれに対し治療を行うようになってきています。ただし乳児期には合併例が多く、 アトピー性皮膚炎の治療をしているにもかかわらず、湿疹が改善しないときは食物アレルギーの関与を疑い、 血液検査や除去試験をおこない最小限の除去になるよう努めていきます。
Q:妊娠中、授乳中の母親の食物制限は必要ですか?
A:現在では、妊娠中、授乳中の食事制限がお子さんのアレルギー疾患予防にはならないと考えられているため、 お母さんの食事制限はおこないません。 ただし、まれに母乳への移行によりお子さんの症状が引き起こされる場合があります。 そういった場合のみお母さんの食事を制限することがありますが、調理法や摂取時間などを工夫することで過剰な制限をせず、 バランスの良い食生活を送ることが大事です。