【第34回】
子宮頸がん検診について
1) 子宮頸がんとは
子宮は子宮頸部と子宮体部にわかれていて、それぞれにがんが発生します。
子宮頸がんと子宮体がんは、発生の原因や危険因子に違いがあり、治療法や予後も異なります。ここでは子宮頸がんについて説明します。
子宮頸がんは子宮の入り口の頸部の上皮(表面の細胞)に発生します。
20歳台から30歳台までは増加傾向にあり、30歳から40歳が罹患のピークになっています。
2000年以降増加し続け、年間約10,000人が子宮頸がんを発症し、年間約3,000人が亡くなっています。
初期症状は、帯下異常(普段と違うおりものが増える、色がつく、水っぽいなど)、不正出血、性交時の出血、
月経が長引くなどの症状がありますが、無症状のことも多々あります。
症状がある際は早めに産婦人科を受診することをお勧めしますが、
特に症状がなくても20歳を過ぎたら2年に1回の子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。
進行がんになると、不正出血に加え、下腹部痛、腰痛、背部痛、血尿、下血など周囲臓器への浸潤に伴う症状が出現します。
早期に発見できれば治療法の選択もあり予後もよいため、早期発見が非常に重要といえます。
2) 子宮頸がんの原因
子宮頸がんの発生の多くは、ヒトパピローマウィルス(HPV)の感染が関係しています。
HPVは性交渉で感染するため、性交経験のあるほとんどの男性、女性が感染するありふれたもので、
大多数のHPV感染は一過性であり自己免疫により自然に消退します。
さらに、HPVは100種類以上の型があり、そのうち子宮頸がんに関連する型をハイリスクHPVといいます。
ハイリスクHPVは、16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、69、73および82型が同定され、
特に最も関連があるものは16、18型ですが、これらが子宮頸がんの約90%を占めています。
つまり、100種類以上あるHPVのうち、これらのハイリスクHPVが何年も持続感染すると子宮頸がんを発症するということになります。
一方で、子宮頸がんの中にはHPVに関連しない癌もあります。
子宮頸がんの組織型には、扁平上皮癌と腺癌があり、ほとんどのケースでHPVが関連しているのですが、
腺癌の一部ではHPV非関連性の癌がわかっています。
性交歴がなくても不正出血などの症状がある場合は早めに産婦人科を受診されることをお勧めします。
3) 子宮頸がんとその前がん病変
子宮頸がんは、正常組織から異形成(CIN)という段階を経て癌に進行していきます。
異形成には、CIN1(軽度異形成)、CIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成・上皮内癌)の3段階があり(新規約ではLSILとHSILの2段階)、
軽度異形成はその5?10%が、CIN2はその20?30%がCIN3以上の病変に進行します。
いいかえれば、CIN1とCIN2は半数以上が消退もしくはそのままの状態が持続するため、基本的に経過観察となります。
CIN3はその10〜20%が癌へ進行していきます。そのため、CIN3は治療対象となります。
前がん病変の段階で発見できれば子宮を温存する治療ができ妊娠や出産も可能となります。
4) 子宮頸がん検診の重要性
i) 一次検診
子宮頸がんは早期発見・早期治療をすれば完治することのできる病気で、がん検診により死亡率を低下させる非常に意義のある検診といえます。
また、若年層で増加していることから、前がん病変で発見できれば子宮温存、妊孕性温存も十分可能となります。
しかし、欧米に比べると日本の検診率はまだ低い状態にあり、検診率が向上することで、今後子宮頸がんによる死亡率低下が期待できます。
子宮頸がん検診は子宮頸部の上皮の細胞を擦って採取します。
短時間で終わり、擦過するため少量の出血を伴いますが、痛みはほとんどありません。
子宮頸部の移行帯(SCJ:S-C Junction)という癌の発生する部分の上皮を採取する必要があり、
盲目的に行う自己採取ではしっかりとSCJの細胞が採取できないため、初期の病変を見つけることは困難です。
自己採取による検診はできたら避けた方がよいでしょう。
ii) 二次検診
一次検診の細胞診で異常を認めた場合、HPV検査の追加や、コルポスコープという拡大鏡を用いた組織検査により確定診断を行います。
組織検査は組織片を採取するため、多少出血しますが痛みはほとんどありません。
細胞診は病変の疑い所見であり、一次検診の結果と二次検診の結果が乖離することもしばしば認められます。
一次検診で異常が認められた際は、早めに二次検診を受けましょう。