【第67回】
手術で治る高血圧
順天堂練馬病院 泌尿器科 清水史孝
腎臓の上には副腎という臓器があります。副腎は、生命を維持するために大変重要なホルモンを産生する臓器です。副腎で産生されるホルモンには、アドレナリン、ステロイド、アルドステロンなどがあります。副腎に腫瘍ができこれらのホルモンが過剰分泌されると様々な症状が引き起こされます。例えば、アドレナリンが過剰分泌されると、発作性の高血圧、便秘、耐糖能異常、心不全症状などが認められます(褐色細胞腫)。ステロイドが過剰分泌されれば、高血圧、肥満、糖尿病、骨粗鬆症、骨折、感染を起こしやすくなるなどの症状が起こってきます(クッシング症候群)。アルドステロンが過剰分泌すると、高血圧、脳血管・心血管障害、腎機能障害などを発症します(原発性アルドステロン症)。どのホルモンにも共通することは高血圧を引き起こすことです。しかし、ホルモン産生の副腎腫瘍は、例外はありますが手術で摘出すれば治すことができるのです。
上記に記した3種類のホルモン産生副腎腫瘍のうち、原発性アルドステロン症は高血圧の約5〜10%に潜んでいることがわかってきました。しかし、高血圧の罹病期間が長くなると、副腎摘出手術を行っても高血圧が改善しない場合があります。若くして高血圧を発症した方、カリウムが低いといわれる方、血圧を下げる薬剤を何剤も服用している方などは、一度簡単な採血チェックを行うことをお勧めします。(普段通院しているクリニックに一度ご相談下さい。採血で血漿レニン活性、血中アルドステロンという値を測定することによりチェックが可能です。)一方、褐色細胞腫、クッシング症候群は、稀な病気とされています。これらの病気も、採血、尿検査でホルモンのチェックが可能です。いずれの病気も、疑われたら内分泌内科、泌尿器科がある大きめの病院で精密検査が必要になります。高血圧をお持ちの方は、手術で治る高血圧の可能性もあるので一度主治医に相談してみてもよいかもしれません。
副腎腫瘍の手術は、後腹膜にある臓器を手術する泌尿器科で行われることが多いです。 手術は通常3〜4か所お腹に穴をあけて腹腔鏡で行われます。手術時間は約2〜3時間程度 です。
高血圧にも種類がいろいろあるということを認識しましょう。
※この「病気の話」は平成30年(2018年)11月16日に医師会館で杉並医師会の会員向けに順天堂練馬病院 泌尿器科 清水史孝先生がお話しされたものの内容を、区民向けにわかりやすくしたものです。副腎というなじみのない臓器の話ですが、ためになる話だと思います。
杉並区医師会 泌尿器科医会 家田和夫