【第96回】
鬱病原因論の一つであるウイルス説について
今回は鬱病原因論の一つであるウイルス説を紹介します。
この説は東京慈恵会医科大学の近藤一博教授が2019年に鬱病患者さんの約8割が「ヒトヘルペスウイルス6の影響で鬱病になる」との研究結果を発表されました。詳しく(しかも判り易くマンガで)は河出書房新社より「うつ病は心の弱さが原因ではない」というタイトルで刊行されています。医師以外でも手を伸ばし易いマンガ本での刊行ですので、メンタルクリニック以外でも患者さんからの質問がある様に思い、今回取り上げてみました。
内容は完全に受け売りとなりますが、30年鬱病患者さんと付き合ってきた小生にとって非常に納得のゆくものでした。
この説の概要。ヒトヘルペスウイルス6は小児期にかかる突発性発疹の原因ウイルスでほぼ100%の人が小児期に感染しており、脳内に潜伏感染することもわかっていた。このウイルスがSITH-1タンパク質を産生し、それが嗅球の一部をアポトーシス誘導する、それにより脳内のストレス物質量が増加し鬱病が発生する。
これより先のお話は文化人類学的に非常に面白いのですが、それは本書を読むときのお楽しみとして今回は踏み込まずにおきます。が、鬱病患者さんに多いメランコリー親和性性格(テレンバッハの病前性格分類)こそが人類の進歩に貢献して来たとする説は一聴に値すると私見ながら感じられました。