【第79回】
小児の夜尿症について
はじめに
小学生になってもおねしょをしている。学校の宿泊行事が心配。など本人も気にしだし、親も心配になるケースがあります。そしてなかなか周りに相談できないなど深刻な悩みとなることがあります。夜尿症について定義、疫学、治療、日常生活対策について説明します。
夜尿症の定義
5歳以降で月に1回以上、就寝中の間欠的尿失禁(夜尿)があり、それが3か月以上継続している場合となります。
疫学
子どもの夜尿の頻度は、小学校入学時には10〜15%程度と考えられ、小学校高学年では、約5%以下にみられます。小学校入学後に受診されるケースが多いですが、7歳で10%程度、男女比は2:1で男児に多いですが、年間約15%ずつ自然治癒していくといわれています。
ご両親のどちらかに夜尿症の既往があると40%のお子さんに夜尿症が出現するといわれておりますが、明らかな原因は分かっていません。
病態
夜尿は、夜眠っている間につくられる尿の量と、その尿をためる器(膀胱)の大きさとのバランスがとれていないために起こります。
タイプ
1.多尿型、2.膀胱型、3.混合型があります。
1. 多尿型は、一晩の尿量が250cc以上ある場合、夜間の尿量が多くて夜尿をしてしまいます。
2. 膀胱型は、夜間の尿量は少ないのに膀胱が小さいため夜尿をしてしまいます。
3. 混合型は、1.と2.を併せ持つタイプです。
タイプの見分け方
夜間尿量、がまん尿量(おしっこがしたいギリギリまでがまんして尿量を測定)を測定して、タイプを分けます。
生活習慣改善、生活指導
生活の基本原則として "起こさず、あせらず、おこらず" です。
夜尿がなかった朝は、たくさんほめるようにしましょう。
生活指導としては、3つの方針があります。
@ 中途覚醒を強制しない
A 夕方以降から飲水を控えめに(就寝2時間前からコップ1杯程度)
B 膀胱容量の拡大、尿を膀胱に十分に貯められるようにすること
また、欠席などがいじめの原因とならないように学校行事にはできるだけ参加をさせましょう。
生活指導で改善がない場合は薬物療法、アラーム療法を検討します。
まずは、1か月の夜尿回数が半分以下になることを目指します。
自宅では、夜尿の頻度、1日の飲水量、トイレの回数、排便の有無、尿量などを記載してから受診されるとよいと思います。
就寝前の排尿習慣をつけましょう。
夜尿が続くことで、お子様の自尊心の低下や、生活の質を悪化させる可能性がありますので治療を行っていきましょう。夜尿量の95%以上は、器質的疾患を有さないとされていますが、稀に夜尿症をきたす疾患が隠れている場合もありますので適切な検査、治療が必要です。
治療
・薬物療法
1. 抗利尿ホルモン薬(内服・点鼻薬)
2. 抗コリン薬(内服)
3. 三環系抗うつ薬
4. 漢方薬
・アラーム療法
医療機関に受診する目安は?
・5〜6歳以上になっても連日夜尿が続く場合
・夜尿に加えて昼間におしっこやウンチを漏らす場合
まず生活習慣の対策を行なってみて、改善がなければ、医療機関にご相談してみてください。
お泊まり対策!
・一時的な対処法として、夜中にそっと起こしてもらう。
・いちばん効いた薬を持っていく。
・夕方から水分をあまりとらないようにする。
・パジャマのズボンは厚手で濃い色にする。