【第63回】
ニキビ(尋常性ざ瘡)とは
ニキビは日本人に多く見られる毛包の炎症です。発症年齢の多くは思春期の12歳〜13歳で、女子の方がやや早く発症します。思春期以降の20歳以上でもニキビは継続することが知られており男性では40%、女性は50%と言われています。近年治療がすすみ、早期に診断し治療を開始することで、ニキビの悪化や痕を防ぐことができるようになってきました。
病因
毛穴に皮脂がたまって発症します。その悪化因子としては、皮膚のバリア機能の低下、ホルモンバランスの乱れ、月経前、便秘、睡眠不足、ストレス、不規則な生活、間違ったスキンケアや食生活など様々です。
発生部位
皮脂腺の発達している顔〜顎〜頚部、前胸部、背中に多くみられます。
症状(図参照)
ニキビは眼に見えない小さな毛穴のつまり(微小面皰)から始まります。(図1)
白ニキビ・黒ニキビ(面ぽう・コメド):角質による毛穴の閉塞(角栓)と皮脂の分泌が過剰になり皮脂が毛穴にたまってできます。(図2)
赤ニキビ(紅色丘疹):皮脂がたまった毛穴に、アクネ菌が増殖し、炎症が起こります。(図3)
膿疱:さらに炎症がすすみ毛穴が壊れて膿がたまります。(図4)
嚢腫:炎症が拡大して皮下に膿の袋を作ります。
硬結:炎症の後に盛り上がって硬くなります。
瘢痕・色素沈着:炎症が強かった後に周りの組織が破壊され凸凹した痕(瘢痕)や結節、血管拡張による赤み、炎症後の色素沈着などが残ります。
治療
ニキビ治療にはいろいろな方法があり、症状やタイプによっても変わります。治療は短期間では難しく、個人差があります。治療の目標はニキビ痕を残さないようにすることです。治療を開始してから炎症性の皮疹がおさまるまでに、約3か月間、その後良い状態を維持するためには長期間かかります。日本では、以前はイオウ製剤や抗菌剤の外用剤しかなかった為、皮疹がおさまっても再発を繰り返すことが多かったのですが、2008年以降アダパレンや過酸化ベンゾイル(BPO製剤)等が使用できるようになり、治療がかなり変わってきました。
面ぽう(コメド)期:毛穴の閉塞を除去する薬を用います。
炎症期(紅色丘疹・膿疱):毛穴の閉塞の除去とアクネ菌による炎症を抑える薬を使います。炎症が強い時には抗生物質の内服・外用も必要ですが、3か月位をめどにして長期には使わないように指導しています。
寛解維持期:面ぽうの新生を抑えることで、炎症性の紅色丘疹や膿疱を出来にくくします。炎症後のニキビ痕を残さないように続けます。
日常のスキンケア
必要な時以外はニキビをいじったり潰したりするのはやめましょう。
洗顔は朝晩2回、洗顔料を泡立てて泡で優しく、こすらず洗い、十分にすすぎましょう。
年齢や肌の状態に応じた保湿をしましょう。
紫外線対策として、日焼け止めを使いましょう。なるべくニキビを悪化させない日焼け止め(紫外線吸収剤フリー・ノンケミカル・敏感肌用等)を選んでください。
化粧品はニキビに負担をかけないもの(ノンコメドジェニックテスト済みの製品など)を選び、ポイントメイクを心がけましょう。
悪化させないために
規則正しい食生活で、かつバランスの良い食事を心がけましょう。
明らかにニキビが悪化するとわかっている食品は減らすよう努力しましょう。
睡眠を十分にとりストレスや疲れをためないようにしましょう。
ニキビは日常によくある疾患ですが、きちんと治療することで、炎症やニキビ痕などを予防するができます。たかがニキビと思わずに、早い時期から皮膚科専門医を受診することをお勧めします。