【第101回】
生理に伴う心身の不調についての話
今回は生理に伴う身体や心の不調についてお話ししたいと思います。生理時に腹痛や腰痛をひきおこす月経困難症(生理痛)、生理の約10日前から身体の不調をひきおこす月経前症候群(PMS)、生理の約10日前から精神的不調をひきおこす月経前不快気分障害(PMDD)の3つの病気についてお話しします。
月経困難症(生理痛)は器質性月経困難症と機能性月経困難症の2つに分かれます。
器質性月経困難症は子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が原因で生理痛がひきおこされているもの。機能性月経困難症は原因がはっきりしないけれど生理痛が強いものです。
器質性月経困難症は原因である病気を外科的治療(手術)で治すこともできますが、手術をしたくない時は内科的治療(薬)で治すことも可能です。薬による治療は器質性月経困難症も機能性月経困難症もほぼ同じです。
@痛み止めを使うA低容量ピルを使うB黄体ホルモン薬を使うC漢方薬を使う等があります。
特に治療に順番はありませんが、殆どの患者様が痛み止めを既に使用されていて効かなくなったため医療機関を受診される事が多いのでAの低容量ピルやBの黄体ホルモン薬が使用される事が多いです。
低容量ピルは内服すると生理が28日毎にきて生理期間が短くなり出血量も減るため生理痛は軽くなります。1ケ月に1回生理がおこるタイプの低容量ピルで効果に満足されない方は3〜4ケ月毎にしか生理がこないタイプの低容量ピルもありますので、そちらをお試し下さい。
また、3〜4ケ月毎でも生理がくるのがつらい方や低容量ピルの副作用(吐気など)で低容量ピルが飲めない方は黄体ホルモン薬をお試し下さい。黄体ホルモン薬は内服すると生理がおこりません。そう聞くと『若い人は飲めないのではないか?』『更年期障害がおこるのではないか?』『将来妊娠できないのでは?』とご心配される方が多いですが、若い方も飲めますしひどい更年期障害もおきませんし、将来の妊娠も可能です。
Cの漢方薬については低容量ピルや黄体ホルモン薬等のホルモン剤の使用に抵抗がある方や妊活中の方に使用されます。種類によっては速効性はないですが続けて行く事で効果がでる場合もあります。
月経前症候群(PMS)は生理前におこる下腹痛、乳房痛、ニキビ等の身体の不調で、月経前不快気分障害(PMDD)は生理前におこるイライラや抑うつ症状などの精神的不調です。原因はいまだに解明されていない部分もありますが、排卵後に急激におこる女性ホルモンの変動が原因ではないかと考えられています。世界的には『PMSやPMDDに低容量ピルは効果がある』とされており、海外では保険適応になっている国もあります。日本ではPMSやPMDDでの低容量ピル使用は保険適応外ですが、月経困難症を伴っていれば保険適応になりますので月経困難症を合併しているPMSやPMDDの方は一度、産婦人科医に相談される事をお勧めします。重症なPMDDの方は精神科の薬が必要になる場合もあります。また、ホルモン剤を使用したくないPMSやPMDDの方は漢方薬を試される事もお勧めします。薬には効果もありますが副作用がないわけではありません。漢方薬にも副作用はあります。薬の使用については必ず医師に相談し、メリットとデメリットを理解した上で使用する事をお勧めします。