病気の話

【第99回】
クループ症候群について

はじめに

 今回は、生後6ヵ月〜3歳頃の小児に起こりやすいクループ症候群についてお話いたします。クループ症候群は夜間の救急外来を受診することが多い疾患のため、症状と受診の目安を知っておくとよいと思います。

1 クループ症候群とは

 クループ症候群は、犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴を伴う呼吸器疾患の総称です。

2 症状

 「ケンケン」と聞こえる犬やオットセイの鳴き声のような咳(犬吠様咳嗽)、声枯れ(嗄声)、息を吸うときにゼイゼイ、ヒューヒューするような音(吸気性喘鳴)を認めます。

3 原因

 下最も多いのは、ウイルス感染によるウイルス性クループ(喉頭気管気管支炎)です。ウイルスの種類は様々でパラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、COVID-19(新型コロナウイルス)、ヒトメタニューモウイルスなどがあります。
 その他の原因としては、細菌感染、異物、アレルギー等があります。
 細菌ではインフルエンザ菌b型(Hib)が大部分を占めます。Hibワクチンの定期接種化により有病率は減少しましたが、喉頭蓋炎という命に関わる重大な病気になることがあるため注意が必要です。

4 診断

 臨床症状から診断されることが大部分です。特に犬吠様咳嗽は診断の際に重要な症状となります。その他、吸気性喘鳴や声のかすれの有無の確認でほとんど診断できます。
 大泣きをすることで症状が悪化することがあるため、患児を泣かせないように気をつけます。酸素飽和濃度(Sp02)の測定は行うことが多いですが、舌圧子の使用やレントゲン撮影等は原則行いません。

5 治療

 外来ではまず喉頭の腫れを和らげるボスミンという薬の吸入をします。吸入の効果は短時間のため、持続的な効果のあるステロイド(デカドロンやリンデロン)の内服を行うこともあります。
 呼吸状態が悪い場合は入院して酸素投与を行ったり、気管内挿管による人工呼吸器管理が必要になることもあります(特に喉頭蓋炎の場合)。

6 受診の目安

 軽症例では加湿だけで症状が改善することがあります。前述のように大泣きにより症状が悪化することもあるため、患児を泣かせないように安静を保ちます。
 咳が止まらなかったり、呼吸が苦しそうだったり、横になって寝られないような場合には夜間でも救急外来を受診してください。特に、息を吸うときに喉の付け根や胸がへこむような呼吸(陥没呼吸)があったり、顔色が悪かったり、よだれが出ているような場合は緊急性が高いです。
 クループ症候群は夜間に症状が悪化することが多いです。そのためクループ症候群の症状があるときはなるべく日中の間に受診しておきましょう。


 
令和6年6月
大宮の杜小児醫院
近田 照己
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