病気の話

【第108回】
心臓カテーテル治療のトピックス

経カテーテル大動脈弁置換術「TAVI」

 高齢化に伴い大動脈弁の動脈硬化による大動脈弁狭窄症(大動脈弁が開かなくなる病気)はますます増加しています。
 経カテーテル大動脈弁置換術「TAVI」は重度の大動脈弁狭窄症の患者さんに対して経カテーテル的に低侵裏で人工弁を留置する手術方法です。
 低侵襲のため超高齢者であっても治療適応となりえます。TAVIを行うには厳しい施設基準がありますが、杉並区内の病院でも受けることが可能となっています。適応となる患者さんは高齢者が多いため治療後のフォローアップのことを考えると、ご自宅から近くて通院しやすい病院でTAVIを受けることにメリットがあります。  また、従来の外科的手術が望ましい場合、あるいは様々な理由でTAVI不適合の場合がありますが、その場合には大動脈弁再建術(AVNeo)の選択肢もあります。患者さんにとってベストの治療法をハートチームで検討し患者さんに提供することが大切であると考えています。
 心雑音を指摘された方、労作時動悸・息切れといった自覚症状のある方はぜひ専門医を受診ください。


提供:エドワーズライフサイエンス合同会社

ショックウェーブカテーテル 血管内石灰化破砕術「IVL」

 これまで冠動脈の高度石灰化病変を切削する治療方法として、ダイアモンドで構成された部分が高速回転するロータブレーター(約20万回転/分)、ダイヤモンドバック(約10万回転/分)が使われてきました。
 近年、ショックウェーブカテーテルを用いた血管内石灰化破砕術(IVL: Intravascular Lithotripsy)が使用可能となりました。
 この方法は腎結石治療の原理を応用し、衝撃波(音圧波)により石灰化を破砕します。石灰化を破砕することでバルーンやステントでは十分拡張できなかった病変も拡張することが可能です。
 血管穿孔のリスクが低く、破砕後も石灰化病変は血管中膜と外膜の間に留まり血管内には漏出しないので末梢塞栓のリスクも低く、安全に治療を行うことができます。高度石灰化病変へのカテーテル治療では、患者さんの血管の状態に合わせて3種類のデバイスを念頭に、より効果的かつ安全な治療を行います。



パルスフィールドアブレーション 〜新たな機序を活用した心房細動向け治療機器〜

 パルスフィールドアブレーションは心房細動治療の為の新しいテクノロジーです。
 カテーテル先端よりごく短時間の高電圧をかけることによりパルス電場を発生させ、細胞膜表面に不可逆的な細胞死を引き起こす治療法です。
 心筋は細胞死を起こす閾値が他組織(心房周囲臓器:神経、食道等)と比較し低いため、ターゲットとする心筋細胞のみを選択的にアブレーションすることが可能となります。
 これにより、従来の高周波通電(RFアブレーション)や冷凍(Cryoアブレーション)で現在も問題となっている、心臓に隣接する食道や横隔膜神経などの周辺臓器への損傷や肺静脈狭窄・閉塞などの合併症が無くなることが期待できます。
 数年前から臨床使用が開始されている欧米の臨床研究*では既にその有益性が証明されています。
*大規模臨床研究(inspIRE Study)
 研究結果:従来のカテーテルと比較し、安全性の向上・手技時間の短縮が立証された。
 合併症発生率:心穿孔、食道瘻、食道蠕動障害、肺静脈狭窄・閉塞等は0% 治療時間:71分      




令和7年3月
荻窪病院 (https://www.ogikubo-hospital.or.jp/
荻窪病院心臓血管センター循環器内科 (https://www.ogikubo-center-heart.com/
加畑 充、神島 一帆、宗次 裕美、石井 康宏
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