【第64回】
月経困難症とピル
『月経困難症』という言葉は聞いたことがある方が多いと思います。
月経困難症は月経に伴って下腹痛や頭痛、腰痛などの痛みの症状のほか、吐き気やイライラなどの症状がおこり、人によっては日常生活を送ることすら大変な場合もあります。
例えば鎮痛剤が効かないような腹痛が毎月定期的に訪れるとしたら、月経は憂鬱どころか恐怖にすら思えるかもしれません。
更に月経の回数は昔の女性に比べ現代の女性ははるかに多くなっています。その背景に初潮の低年齢化や一生を通しての妊娠・授乳の回数の減少などが関係しています。
月経の回数が多ければ月経困難症のある方はそれだけ苦痛を感じる機会が多いといえます。
治療としてのピル
月経困難症の治療には鎮痛剤などの対症療法のほか、漢方やピルなどを使ったホルモン治療などがあります。ピルは最近使われている方が増えてきた印象ですが、まだ抵抗がある方もいらっしゃると思います。
今回はホルモン治療としてのピルの使い方についてお話します。
いわゆる低用量ピル(OC)はエストロゲンと黄体ホルモンの合剤ですが、避妊の目的で使用されることが一般的です。その低用量ピルと同じような成分で月経困難症の治療に保険適応で使われるものがLEP(low dose estrogen progestin)製剤です。
LEP製剤も低用量ピルと同様、排卵を抑制し子宮内膜の増殖を抑えることで月経痛を軽減させたり月経量を減らす効果があります。
LEP製剤の内服方法
LEP製剤の内服方法には周期投与法と連続投与法があります。
周期投与法ではLEP製剤を21日間内服し、7日間の休薬中に出血が起こります。
連続投与法ではLEP製剤を最長120日内服し休薬するため、月経の回数を減らすことができます。ただ、連続投与では不正出血の起こる頻度が周期投与に比べ高くなりますが、内服を継続していただくことで改善されていくことも多いです。
連続投与法では月経の回数を減らすことで月経痛や出血の回数を減らすことになります。回数が減れば月経痛などの悩みも減り、日常生活を楽に過ごせるようになる期間も増えるかもしれません。
副作用について
薬の内服初期には頭痛や吐き気、乳房の張りなどが出ることがあります。また、不正出血は比較的頻度の高い副作用です。少量であれば内服を継続していただいて問題ありません。
最も重大な副作用として血栓症が挙げられます。頻度は低いですが命の危険にかかわることがあり、そのリスクとして喫煙や年齢(40歳以上の方)、肥満などがあります。気になる症状がある時はかかりつけの先生にご相談ください。
最後に
月経は毎月なくてはならないものとは考えずに、ご自分の症状やライフスタイルに合わせて治療を選択していただくことができるようになってきました。妊娠を希望する場合には内服をやめることで排卵・月経はもどってきます。月経痛や月経の量で悩まれている方はぜひ一度婦人科でお話を聞いてみてください。