病気の話

【第81回】
股関節痛 痛みの原因とその治療は?

 成人の股関節の痛みの原因として考えられるものは比較的若年であれば寛骨臼形成不全によるもの、50歳以降に起きるものとしては変形性関節症があります。

寛骨臼形成不全

 股関節は骨盤側の寛骨臼と大腿骨側の大腿骨頭で形成されていますが、骨盤側の寛骨臼が浅いものを形成不全といいます。これは骨格の形成過程において寛骨臼の発育が悪かった場合に生じることが多く、女性で特に出産後に発見されることが多いです。寛骨臼形成不全では、徐々に関節軟骨が摩耗していき、比較的若年(40−50歳)で関節の変形が進行していきます。関節軟骨が残っている早期の関節症であれば骨盤骨切り術で関節温存が可能です。

寛骨臼形成不全

変形性股関節症

 過度な運動、体重増加、加齢、外傷などのさまざまな要因によって股関節の関節軟骨が摩耗し、関節症が進行していくと股関節痛による関節の機能障害が生じ、歩行困難、可動域制限により日常生活に支障をきたします。この原因として日本では寛骨臼形成不全によるものがもっとも多く、杖による免荷、薬剤による疼痛軽減、大腿四頭筋訓練などの保存的治療を行います。しかし、これらの治療で効果がない場合には、関節機能改善のために人工関節置換術が必要となります。

人工股関節全置換術

 人工関節は近年の材質の改良、手術方法の加療に伴い、以前と比べて合併症が少なくなり、長期の耐久性が向上しました。股関節周囲は大腿四頭筋、殿筋など大きな筋肉組織に覆われていますが、低侵襲手術として筋切離を行わない低侵襲手術が行われており、当院でも10年以上前から低侵襲手術をとりいれています。この方法では痛みが軽減し、筋力の回復が早く、人工股関節の脱臼が軽減することが報告されています。最新の調査では、現在主に用いられているインプラントの長期成績は30年近いことが報告されました。今後のさらなる進歩が期待できると思います。


 
令和5年1月
河北総合病院 整形外科(https://kawakita.or.jp/suginami-area/kgh/shinryou/content_seikeingeka/
部長 湯浅 崇仁
副院長 鎌田 孝一
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