病気の話

【第49回】
精神科Q&A

今回、皆様が精神科医療に対しての疑問を持っていると思われる事に対してQ&Aでまとめてみました。
一部私見が入っている内容もございます。
精神科医療機関を受診される時には、事前に受診医療機関に御相談御確認下さい(尚、多くの精神科診療医療機関では、初診時は予約制となっております)。

Q1)標榜が心療内科と精神科の違いは?

お答え)一番の相違は、心療内科を標榜としている医療機関の管理者(院長)の医局の出身が内科である事です。
精神科を標榜する医療機関の院長は、精神神経科医局出身です。医局とは、医師が国家試験合格後に、その専門性を選択した後に所属する医学部付属大学病院のセクション(精神科医局であれば、精神科医の教授が責任者)です。
精神科医が所属する学会は日本精神神経学会です。心療内科標榜されている先生も、日本精神神経学会に所属出来ます。
メンタルの診療所では、精神科と心療内科、両方を標榜する事が一般的です。

Q2)心療内科と精神科の診療内容の相違は?

お答え1)統合失調症、単極及び双極性障害、抑うつ気分、抑うつ状態、適応障害、パニックや不安恐怖障害、強迫性障害、マタニティーブルー(産後抑うつ)、月経前緊張症候群(P M S)、不眠症発達障害、摂食障害、認知症、アルコール依存症等のICD-11及び精神保健福祉法で定義されている病状は、心療内科でも、精神科でも診療はします。
てんかん疾患は脳波検査の関係で、原則診療致しません(脳波検査が出来、てんかんを診ている診療所はあります)。

お答え2)殆どの精神科医は、精神科病院を勤務している経験があり、東京都精神保健指定医の資格を有しております。つまり重度の精神障害者の対応を経験しております。
近年精神病の軽症化に伴い、重度の病状の患者様の来院が殆ど診なくなりましたが、精神科医は治療が出来ます。
また精神科医であれば、精神障害年金診断書の記載等の精神保健福祉法上の書類(精神保健指定番号が必要な書類)に対応します。
外来通院費減免の自立支援医療については、心療内科標榜の医療機関、精神科標榜の医療機関で対応は出来ますが、どちらの診療科でも東京都の自立支援指定医療機関でないと記載出来ません。
因みに精神障害手帳の診断書は、どの医療機関(内科、外科、婦人科、皮膚科等)でも診断書の記載は可能です。
ただし精神保健福祉法上での精神疾患病名で、半年以上の継続罹病(通院)履歴が必要となります。

Q3)専門医療機関を探すには?

お答え)現在、東京都精神科医療地域連携事業{区西部保健医療圏}(精神科医療と他科の医療の連携促進)を行っており、杉並区医師会も参加協力しております。
昨年より開始した同事業での「こころの医療機関マップ」(https://kuseibu-kokoro.jp)で、杉並区、中野区、新宿区の医療機関検索が出来ます。
また区内の医療機関であれば、当、杉並区医師会ホームページで、約25の専門医療機関の検索が出来ます。
区内の病院では、精神科医が常勤し、河北総合病院(神経科、物忘れ相談外来、小児発達障害外来)、佼成病院(精神神経科外来)、浴風会病院(認知症、物忘れ外来)があります。

Q4)精神科診療の診療代は?

お答え)初診時には、院外処方箋医療機関では、3割自己負担の方で、約2000円(20歳未満の受診では約1000円負担が増えます)、再診代が約1500円。
調剤薬局で、処方数や処方内容によりますが、約3000円が平均のようです。
自立支援医療を受けられると、個人及び世帯収入により減免率は変わりますが、国民健康保険の患者様の自己負担金は、概ね上記負担金額の約1/3程度になると思われます。

Q5)自立支援医療、精神障害者手帳、精神障害者年金の申請は?

お答え)自立支援医療、精神障害者手帳は、杉並区内在住の方では、地域管轄の保健センターに申請窓口がございますので、相談申請が出来ます。
精神障害者年金の申請は、杉並区役所国民年金課で相談する事をお勧め致します。
国民年金課より、日本年金機構(社会保険庁)高円寺事務所で相談申請する様に指示される事もありますが、保険料の未納期間等のトラブルでも、親切に説明アドバイスして頂けます。
尚、精神障害者手帳及び精神障害者年金は、罹患されている精神疾患により、日常生活活動能力労働能力の著しい低下(病状より、日常生活が著しく低下され円滑に出来ない、就業出来ない等)をされている方が対象になります。
ただし、自立支援医療については、不眠症、抑うつ状態等の軽度のメンタル障害でも対象になりますが、通院医療機関での診断書代がかかりますので、数回の通院ではメリットは少ないかと思われます。

Q6)家族相談を受けたいのですが?

お答え)対応は診療所で異なります。事前に受診される診療所にお問い合わせ下さい。
診療所の対応は 1)個人情報保護法の観点よりお断りする 2)相談対象者の保険証で、療家族相談保険診療 3)自費相談 4)相談対象者の病名の配慮から(病名をつける事で、逆に相談者対象者を病人にしてしまう事の回避)相談家族の保険証で診療します、何れかで対応します。
家族相談では、近年閉じこもりの方のケースが非常に増えております(以前は不登校、認知症の心配の相談でしたが、不登校は社会的に受容され教育現場対応が良くなり、認知症はケア24で相談業務する様になりました)。
社会への適応障害となっているケース、家庭内でも適応障害となっているケース。病状では、昼夜逆転、携帯電話PC依存(ネット依存)、ゲーム依存、無為、抑うつ気分、不眠症、過食症、重度になると幻聴、妄想、家庭内暴力他が診られます。
発達障害病態がベースになっている事が、現在多くなっておりますが、精神病病態の方も、少なくなりましたが認められます。
残念な事ですが、精神科医が往診を受ける事は、一般診療ではございません。興奮が影しいケースも、一般外来診療では対応出来ません。自傷他害が切迫している時、興奮している時には警察に御相談、連絡下さい 。
保健センターに御相談されると、地区担当の保健師に対応して頂けます(ケースによっては、医師と御自宅に訪問して頂ける事もあります)。

Q7)失恋相談でも大丈夫ですか?

お答え)日常事象での精神的な困り事で、メンタル医療を希望され、受診される時代になりました。
「適応障害+抑うつ状態」「神経衰弱状態」と診断する事が多くなりました。
治療は、休養のお勧めとカウンセリング療法を主として、薬物療法は、補助的、少量短期間投与で対応する事が一般的です。
余談ですが、長年睡眠導入剤服用の高年者の薬物依存の診療をした事はございません。良眠は、認知症の予防のエビデンスが出ております。
コロナウイルス対策でも、免疫低下予防で、感染予防では非常に大事(お大事に)です。


 
令和2年3月
杉並区医師会精神科医会
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