【第62回】
「PFAPA症候群」って聞いたことありますか?
はじめに
保育園や幼稚園に通っているこども達の中に、高熱を出しやすくて度々休園している子が結構みられます。原因としてはウイルス性の呼吸器感染症や胃腸炎が圧倒的に多く、時には溶連菌や肺炎球菌などの細菌性の感染症のこともありますが、これらのような感染症ではなく自己免疫の異常で発熱を繰り返しているケースを小児科外来ではよく経験します。
いくつかの疾患が「周期性発熱症候群」としてまとめられていますが、その中で頻度的には一番多いとされている「PFAPA(Periodic Fever with Aphthous stomatitis , Pharyngitis and Adenitis)症候群」について説明します。
PFAPA症候群の概念・疫学
そのまま訳すと、「周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群」となり、1999年に現在の名前になった比較的新しい疾患概念です。
患者さんの多くは5歳以下(日本での平均発症年齢は3歳前後)の乳幼児ですが、今のところ正確な罹患率は不明、原因遺伝子も解明されておらず今のところ遺伝性はないとされています。(他の「周期性発熱症候群」のいくつかは原因遺伝子も遺伝性も確認されています。)
症状:以下の症状が平均4週(3〜8週)間隔で規則的に繰り返すのが特徴です!
全例に39~40℃の高熱が平均5日間(3~6日)!継続します。
アフタ性口内炎が50~70%に認められます。
両側頸部に非化膿性リンパ節炎が70~80%に認められます。
咽頭炎、扁桃炎が50~90%に認められ、膿苔が確認されることが多いです。
その他、頭痛、倦怠感、腹痛、下痢などを伴うこともありますが、全身状態は比較的良好に経過します。
本症の診断に有用な特異的検査所見はなく、上記の臨床所見により診断されます。
主な治療法
発熱時にステロイド(プレドニン)0.5〜1.0mg/kg を1回(もしくは2回)内服すると劇的に症状が改善します。ただし頻回に使用するとPFAPAの発症間隔が短くなってしまうという報告もありますが、自験例に於いては少数回の投与では影響ない印象があります。
予防的には、H2ブロッカー(シメチジン)15mg〜40mg/kg/dayを分2で連日内服すると、約60%に発症抑制が認められています。自験例に於いては発症してしまった時の軽症化も認められています。
扁桃腺やアデノイドの切除で60%以上の発症抑制が認められているので、内服で効果が全くみられないときは検討に値します。
予後
多くのこどもでは、成長するに従い発熱周期が徐々に延びていき、随伴症状も軽症化がみられ、特に後遺症もなく数年〜10年以内で自然治癒しますので将来的には問題ない疾患と思われます。
よってこの疾患の一番の弊害点は、御両親の就労の妨げとなったり、本人の集団生活の関わりに影響を与えてしまったりすることだと感じています。