病気の話

【第111回】
不妊症の最近について

 近年、おひとりさまが増えていると言われています。
 結婚という形をとらないパートナーシップを選択されるカップルもありますので、単純におひとりさまがこどもを持たないということはイコールではないと考えられます。
 結婚という形にこだわらない家族の形もありますが、生まれる子供の数も減っています。
 合計特殊出生率とは、15歳から49歳の女性の年齢別出生率を合計したもので、一人の女性が生涯に産む子供の数を推計した指標です。2023年の合計特殊出生率は1.20で、1947年に統計を取り始めて以降の最低水準と報告されました。前年を下回るのは8年連続で、都道府県別の合計特殊出生率もすべて前年を下回っています。都道府県別の合計特殊出生率は、最も高かったのは沖縄県で1.60、最も低かったのは東京都で、0.99と1を下回りました。

 産みたくても社会状況による子育ての困難さから産めないというのであれば、今後の日本全体で考えていく課題かと思います。しかし、社会状況が許しても、不妊症という病気で妊娠できないということもあります。

 年齢が若いということは、妊娠することに有利なのは明らかですが、若くても不妊症の方はいらっしゃいます。非婚化、晩婚化による、先進国だけの問題なのか、世界的にみても不妊症が増えているのか、これについて解析した論文(Liang Y. et al., Hum Reprod, 2025, 00(0), 1-16 )が最近発表されました。

 この論文では1990年から2021年までの21 の地域と 204 の国と地域における性別と社会人口統計から算出される指数 (SDI) 別に、15〜49歳の不妊症の件数と粗不妊症有病率に関する世界疾病負担研究(GBD)2021のデータをもとに世界、地域、国レベルでの不妊症の有病率と傾向について解析しており、その結果、東アジア、南アジア、東ヨーロッパなどで不妊症の有病率が最も高くなっていることがわかりました。そしてその傾向は2040年まで引き続き増加すると予想されています。この研究では、不妊症の各原因の寄与率が提供されていないため、性別、年齢、場所別にこれらの原因が不妊症に及ぼす影響を比較することはできません。しかし、不妊症増加の決定的な原因は明らかではありませんが、日本だけが問題なのではなく、世界的に問題となってきているということがわかりました。

 不妊症の原因は、男女ともに半々であるとされています。

 将来もし子供をもつことを考えたら、不妊期間によらず、不妊治療専門クリニックへの早めの受診をご検討されるのが、妊娠への近道かもしれません。


令和7年6月
荻窪病院 虹クリニック(http://www.ogikubo-ivf.jp/
片岡 典子

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