病気の話

【第45回】
ロコモティブシンドロームについて

はじめに

近年の医療技術の進歩はめざましく、昔は不治の病と言われていた疾患も治療・予防できる時代になりました。
そして日本は女性の平均寿命が87.26歳、男性が81.09歳、となり、女性は世界第2位、男性は世界第3位、(2017年度)世界有数の長寿国となっています。
しかしながらその反面で、高齢化にともない転倒などによる骨折で寝たきりになる高齢者も増加しています。 内臓が元気で平均寿命が延びても、足腰が立たず寝たきりの時間がただ延びただけでは長寿の意味がありません。 他人に頼ることなく、自力で身の回りのことをこなせる期間、つまり健康寿命を延ばさなければなりません。

概念

人間の体は内臓器と運動器で成り立っています。運動器とは骨格・筋肉といったからだを支える部分です。 車で例えれば、エンジン・ミッションは内臓器であり、ボディ・タイヤが運動器といえます。

健康寿命を延伸するべく、日本整形外科学会では運動器の障害のために移動機能の低下をきたし要介護状態や要介護になるリスクの高い状態を ロコモティブシンドローム(運動器症候群)と呼ぶ、新しい概念を提唱しました。(メタボに対してロコモと憶えてください。)

診断

具体的な事例としては、
1. 片足立ちで靴下がはけない
2. 家の中でつまずいたり滑ったりする
3. 階段を上がるのに手すりが必要である
4. 掃除機かけなど家のやや重い仕事が困難である
5. 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
6. 15分くらい続けて歩くことができない
7. 横断歩道を青信号で渡りきれない
などです。これらに心当たりのある方はすでにロコモかもしれません。そしてこれを放っておくといずれは介護が必要になる可能性が高いのです。

治療・予防

寝たきりの高齢者にならないように普段からの運動習慣を身に着けましょう。
 普段運動していない方にはロコモを防ぐ運動「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」をおすすめします。

1. 「片脚立ち」バランス能力をつけるロコトレ
転倒しないようにつかまる場所のあるところで、片足を床から少し離れる程度に、左右交互に1分間ずつ持ち上げます。これを1日3回行ってください。

2. 「スクワット」下肢筋力をつけるロコトレ
肩幅より少し広めに足をひろげて立ち、膝をまげ、お尻を後ろに引くように身体をしずめます。(膝が90度以上曲がらないように気を付けてください)
深呼吸をするペースで5-6回繰り返してください。これを1日3回行ってください。

まずは1.と2.のロコトレからチャレンジしましょう。

ロコモティブシンドロームについて詳しく知りたい方は日本整形外科学会ロコモ公式ページhttps://locomo-joa.jp/locomo/を是非ご覧ください。


 
令和元年11月
ロコモアドバイスドクター 東京衛生病院 整形外科(http://www.tokyoeisei.com/
平林 尚
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