【第74回】
咽頭痛−のどの痛み−(〜コロナ含め〜)
「のどが痛い」時には風邪の他にも様々の疾患が考えられます。
まず風邪の原因は「ウィルス性」がほとんどですが、「細菌性」もあり抗生剤治療が必要になることもあります。逆に「ウィルス性」には抗生剤治療は必要がありません。咽喉頭所見から抗生剤の必要性を視診で鑑別出来る場合もありますし、インフルエンザウィルスや新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の場合はPCR検査以外に簡易抗原検査キットも診断に有用です。「ウィルス性」には根治目的の治療薬が無いことが多いですが、インフルエンザウィルスのように有用な処方薬がある場合もあります。
今年のオミクロン株によるCOVID-19では発熱の他、咽頭痛(=のどが痛い)も主要な症状になっております。令和4年3月〜4月に当院でCOVID-19と診断された68人中51人は咽頭痛を自覚されております。68人の中で37.5度以上の発熱を有した方は30人で37度〜37.4度の方を合わせても40人であり、咽頭痛がいかに多いかがわかります。明らかに咽頭発赤が著明な方に陽性者が多かった印象はありますが、これだけでは確定診断にはなりません。
合計 |
|||
発熱37.5度以上(37-37.4度) |
30人+(10人) |
68人 |
|
咽頭痛 |
51人 |
68人 |
また当院でCOVID-19の診断となった方の中には「前日または当日にPCR検査陰性」であった方が2人、「前日や当日の自宅抗原検査キットでは陰性」であった方が4人でいらっしゃいました。発症後から検査までの時間や検査方法により偽陰性(本当は陽性なのに検査結果は陰性になる)ことも考えられますので、COVID-19を疑った場合は医療機関にご相談下さい。
ところで「細菌性」の感染症による咽頭痛の中には重症になる場合もあります。一つ目は扁桃周囲膿瘍「へんとうしゅういのうよう」(画像1)であり、もう二つ目は喉頭浮腫「こうとうふしゅ」(画像2)です。
扁桃周囲膿瘍はいわゆる扁桃炎が増悪して扁桃周囲に膿瘍を形成した(膿が広がった)状態であり、緊急処置や入院が必要になります。非常に重症な場合は縦隔や肺にまで到達することもあります。(画像1は左側(×印)の扁桃周囲膿瘍となります。)
また喉頭浮腫(☆印)は喉頭内視鏡(鼻からの内視鏡)を用いて診断できますが、気道狭窄により窒息の可能性がある為に緊急気管切開手術が必要になる場合もまれではありません。これらは「細菌性」の感染症である場合が多く、明らかな「細菌性」の所見を認めた場合は細菌培養検査を行って診断を深めていくことが治療に有用になります。
開口障害(口が大きく開かない)や嗄声(声がかすれたり、こもったような声になっている)または嚥下時痛(飲み込むときに痛みを感じる)や起坐呼吸(呼吸困難が横になった体勢で増強し,座った体勢で軽減)は扁桃周囲膿瘍や喉頭浮腫の危険性がありますので、迷わず受診してください。
その他鑑別となる疾患としては悪性腫瘍・口内炎・魚骨等の異物・歯科領域疾患など多岐にわたります。CT等の画像検査が必要な場合もあります。
現在発熱のある方の診察方法は各診療所によって異なります。事前確認の上受診されることをお勧めいたします。