【第15回】
「妊娠適齢期に関して」〜加齢に伴う不妊治療の成功率等
原始卵胞
女性が母親から生まれた直後には、卵巣に約200万個の原始卵胞があるとされています。 こちらから卵子が産出されてくる訳ですが、この原始卵胞は年齢と共に減少してくることが分かっています。 10歳未満の初経を迎えていない女の子でもどんどん減って行き、自然に消滅していくものなのです。 閉経の目安となる40代半ばから50歳前後には、原始卵胞が数千個にまで減ってしまいます。 これはひと月に消滅する原始卵胞の数と同じくらいです。(図1)
図1. 女性の卵胞数と年齢を示したグラフ
必ずしも若いうちに卵子が多い時期に妊娠にトライした方が良いということでもありませんが、選択枝が多い方が妊娠し易いという要素はあると思われます。
一般の不妊治療では初めには自然に近い方法で試みて行きますが、暫く妊娠出来ないと
排卵誘発剤を使って妊娠する確率を上げようとする場面が増えてきます。
年齢が上がって来ると卵巣にある卵子の在庫が減ってくる訳ですから、同じ刺激を加えても少ない卵子しか得られないことが増えてくることになります。
こういったことが根拠となって「妊娠するなら少しでも若いうちが良い」と言われて来ています。
AMH (抗ミュラー管ホルモン)
抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、発育途中にある卵胞から分泌されます。従って
この値は、その時期に育つ可能性のある卵子の在庫を示すと考えられています。
従来は卵胞刺激ホルモン(FSH)が卵巣の予備能(卵子の作り易さや在庫等)を示すとされてきましたが、
AMHの方が生理周期内での変動幅が非常に小さく、卵巣の予備能評価に非常に適すると見なされています。
図2. 虹クリニックに通院患者さまのAMHと年齢
年齢が上がるに従いAMHは低下していくことが分かります(図2)。 若いうちの方が多くの卵子を得られ、可能性が増えることを裏付けています。
高度生殖医療の妊娠率と流産率
日本産科婦人科学会では、毎年日本中で実施される体外受精の結果を全て集計して公表しています。 下記が最新の2012年の結果です。(図3)
図3. 2012年 日本における体外受精の成績 (日本産科婦人科学会集計)
妊娠率・生産率は40歳を越えると3-15%程度に減少し、流産率は37-38歳くらいから徐々に増加して40歳を越えると40-80%と非常に高くなっています。
従って遅くとも35歳前後には妊娠の準備をするのが好ましいと思われます。