【第2回】
治療薬としての低用量ピルの話
みなさんは、低用量ピルにどんなイメージをお持ちですか?
避妊薬=なんとなく身体に悪そう、副作用が心配・・・等々、日本ではなぜか悪いイメージが先行してしまい、普及が遅れているのは本当に残念なことです。
なぜなら、低用量ピルは安全・確実に避妊できるだけでなく、副効用と呼ばれる体に良い作用がたくさんあるからです
低用量ピルと月経困難症
低用量ピルは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類のホルモンの合剤です。
薬を飲むと排卵が抑えられるので、飲み忘れさえなければ確実に避妊ができます。
また、子宮内膜の増殖を抑える作用があるので、月経血の量を減らし、月経痛が軽くなるという効果があります。
月経困難症は、機能性月経困難症と器質性月経困難症に分類されます。
機能性月経困難症は、原因となる疾患はないけれども月経痛がひどい状態を指し、器質性月経困難症は、子宮筋腫や子宮内膜症など病気が原因で起こる月経痛です。
近年、機能性月経困難症の痛みを放置していると、将来的に子宮内膜症になるリスクが約2.6倍になることがわかってきました。
子宮内膜症は、本来であれば子宮内にのみ存在する子宮内膜が、骨盤内・外のいろいろな場所で増殖してしまう病気です。
子宮内膜症は、月経を繰り返す度に悪化していき、不妊症の原因となることが問題になっています。
子宮内膜症がひどくなると、月経時以外にも下腹部痛が起こり、性交痛や排便痛などの症状が現れることもあります。
卵巣内で子宮内膜が増殖してしまう卵巣チョコレートのう腫は、長期間放置すると卵巣がんになる危険性もあります。
低用量ピルは、子宮内膜の増殖を抑える作用に優れているため、子宮内膜症の予防や治療をすることができます。
現在は、保険適用の月経困難症治療薬として2種類の低用量ピルがありますので、月経痛でつらい思いをされている方は、我慢なさらずにぜひ婦人科を受診してみてください。
低用量ピルと副効用
低用量ピルには、月経痛治療以外にも女性のQOLを向上させる様々な身体に良い効果があります。
月経周期を整えて月経不順の治療ができますし、旅行やスポーツの大会、受験など月経にあたりたくないときに出血しないよう、確実に月経をコントロールできます。
PMS(月経前症候群)は、月経前にイライラしたり、気分が落ち込みやすくなったり、頭痛、腹痛などの症状が出る疾患で、排卵に伴うホルモンの変動が原因のひとつと考えられています。
低用量ピルは、排卵を抑えてホルモンの状態をコントロールできるので、PMS治療に効果が高い薬です。
ホルモンのバランスが整うと、ニキビや肌荒れが改善しますので美容にも効果的です。
卵巣がん、子宮体がんについては、低用量ピルを内服することでがんのリスクを下げることもわかっています。
最近では、これらの副効用を目的に、低用量ピルを開始される女性が増えてきています。
低用量ピルと副作用
低用量ピルと聞くと、副作用を心配される方が多いのですが、健康な生殖年齢にある女性なら、大抵の方が問題なく内服できる薬です。
低用量ピルで太るというのも間違った情報で、医学的根拠はありません。
内服当初は、少し吐き気や頭痛、不正出血が起こることがあります。
これらはマイナートラブルと呼ばれる症状で、長くても3カ月程度内服を続ければおさまっていくことがほとんどです。
重篤な副作用として血栓症があげられますが、低用量ピルで血栓を起こす確率は、妊娠中の女性が血栓症を起こす確率のさらに半分以下と非常に稀なことです。
ただ、ヘビースモーカーや、心臓の病気など、血栓を起こす可能性のある持病がある方は注意が必要です。
内服に際しては、必ず医師と相談のうえで開始しましょう。
おわりに
月経痛は、我慢するのではなく正しく治療することが大切です。
痛いときは鎮痛剤を内服すること、痛みがひどい場合は器質性月経困難症の有無を調べるため、婦人科を受診していただくことが必要です。
低用量ピルは、女性のQOLを向上させる薬です。
上手に利用して、みなさんの生活がより快適になるよう、ぜひお近くの婦人科へ相談にいらしてください。
杉並区医師会員(産婦人科)の医療機関はこちらをご参照ください。
http://www.sgn.tokyo.med.or.jp/search/list2.php?code=15