病気の話

【第105回】
梅毒について

はじめに

 梅毒は梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌による性感染症で、性行為などが原因で口や性器の皮膚や粘膜の小さな傷から体内に侵入することにより感染します。男性は20代〜50代、女性は20代に好発し、現在増加傾向にあります。また妊娠母体に感染すると胎盤を通じて胎児に感染し、流産、死産、先天梅毒の原因となります。

症状

顕症梅毒
 第1期梅毒:感染後3週間ほどで侵入部位(主に性器)に軟骨様の固さのある初期硬結が生じます。やがて潰瘍を形成して硬性下疳となります。初期硬結や硬性下疳の出現後やや遅れて鼠径部などのリンパ節が無痛性に腫れてきます。これらは放置していても3週間程度で消退し、約3か月間無症状となります。

 第2期梅毒:感染後3か月ほどで梅毒性バラ疹と呼ばれる淡紅色の皮疹が手掌や口唇周囲に出現します。それらはしばらく経つと自然に消退し、その後丘疹が出現します。また手掌や足底などの皮膚が厚い箇所に乾癬が出現します。その他3年にわたり多彩な皮膚症状が消退と再発を繰り返します。またHIV患者では髄膜に感染する神経梅毒を認めやすいと言われています。

 第3期梅毒:感染後3年以上経過すると病巣が深部の骨や筋に及び、結節性梅毒疹やゴム腫が生じます。

 第4期梅毒:感染後10年以上経過すると大動脈瘤や大動脈炎、脊髄癆や進行麻痺などの神経梅毒を認めます。

無症候性梅毒
 症状は認められませんが、梅毒血清反応が陽性のものをいいます。生物学的偽陽性反応(膠原病、妊娠などの基礎疾患や結核などの感染症が原因で起こりやすい)を除外する必要があります。

先天性梅毒
 生下時に梅毒疹など皮膚症状が出現、もしくは学童期以降に角膜炎や難聴、歯牙異常が生じる事があります。

治療

 ペニシリン系の抗菌薬投与を基本とします。投与期間は症状によって異なっています。現在は抗生剤の臀部への筋肉注射も行っております。妊婦やペニシリンアレルギーの患者さんには別の薬を投与します。4週間後に採血にて治癒判定を行います。その後も再発の可能性もある為定期的な採血が必要となります。

パートナーの治療も大事

 ピンポン感染を防ぐため、パートナーも同時に治療することが大切です。梅毒患者と90日以内に性的交渉があった場合は、パートナーも検査をする必要があります。また予防のためにも性行為の際はなるべくコンドームを使用しましょう。


 梅毒は増加傾向にあります。皮膚症状が出現した際は泌尿器科や皮膚科、感染症科を受診するようにしましょう。
 また杉並区の保健所で性感染症の無料検査を行っております。ホームページをご確認ください。



 
令和6年12月
わかまつクリニック(https://wakamatsu-clinic.com/)
若松 太郎
↑ページの一番上へ