病気の話

【第13回】 耳鼻科のお話(その6)
耳垢栓塞

耳垢栓塞

 耳垢を繊細に除去するための道具が作られるようになったのは精密な石器、骨器な どの道具を製作したといわれる 4万年前のクロマニヨン人の出現以降であると思われます。 それ以前の我々の祖先は耳垢の除去をあまりしていなかった可能性を否定できません。 聴力は捕食者(肉食動物)等の接近察知には欠かせず、生存する上で重要な能力の1つでありました。 このことから人類には遺伝子の働きによる何らかの耳垢除去機能がそなわって いたものと考えられます。
 Alberti という人は 1965 年に染料を人の鼓膜上に塗布した後、数週間にわたり鼓膜及び 外耳道を観察することで 鼓膜、外耳道表皮の外側への移動を実験的に確認しました。
 この表皮の移動が耳垢を耳の外に排出するように働きます。そのため現代でも耳掃除を 行わなくても耳垢がたまらない人もいます。
 一方、ある耳栓を用いた実験では、わずか3mmでもすき間があれば聴力はほぼ正常 に保たれました。 このことからすき間のある耳垢そのものは放置しても大きな問題を生じることは少ないとも考えられます。 それでも耳鼻科健診の時に耳垢があるとその奥の鼓膜 が見られません。そのため耳垢の除去を健診後にお願いすることも多いのです。
 耳掃除の仕方 無理せず外側のとりやすいものだけをとるのが原則です。 耳掃除中に兄弟がぶつかってくることもあるので当事者以外は近くによらないように注意しましょう。 また肘をついたまま耳掃除をすると肘ががくんと動いた時に思わぬ力がかかることがあるので耳掃除中には肘はつかないで下さい。
 また外耳道が先天的に狭い人、あるいは耳の術後で外耳道表皮の外側への移動がうまくいかない人などは 無理をせずに耳鼻科でとってもらうほうが良いでしょう。その他の方も とりにくいと思ったら気軽に近くの耳鼻科で相談しましょう。



 
平成27年3月 西川 典秀
↑ページの一番上へ