【第88回】
免疫疾患の話し
免疫とは?
「免疫」とは、その言葉の通り、疫(えき)を免れる(まぬがれる)こと、つまり伝染病などから逃れることを意味しています。植物を除くと、地球上でもっとも多い存在が細菌、ウイルスなどの微生物です。我々は、それらとバランスを取っていく必要があります。通常免疫は、外からの自分ではないものを認識する → 害があるかどうか見分ける → 害になるものを無毒化し体外に排除する → 害なるものの情報を記憶する、の順に進みます。この過程には、さまざまな免疫細胞とそれぞれと連絡しあう物質がさまざまに絡み合い働いています。
免疫疾患とは?
免疫に異常があり、何らかの症状を起こす疾患をさします。何らかの免疫機能が低下・消失している場合と過剰な場合があります。前者は免疫不全症で、生後から乳児期に発症することが多いですが、成人になり発症する場合もあります。後者は、自己炎症性疾患/自己免疫疾患と呼ばれるグループをさします。
これらの病気は、全身の臓器に症状を起こします。病気ごとで出やすい症状や臓器が異なります。そのため、最初は分かりづらく、症状が増えてきて病気が発見されることもあります。
免疫疾患を疑う症状とは? どんな病気があるのか?
関節がこわばる、微熱が続いて下がらない、皮膚が紅くなっている、などの症状から疑うこともあります(図1)が、よほど特徴的でない限り、一つの症状で即診断にはなりません。経過、症状、検査の結果を総合して診断に辿り着くことも多い病気です。
さまざまな病気があります。図2に挙げたものは、リウマチ性疾患として分類されている代表的なものも含めて載せています。
関節リウマチは、みなさんが普段「リウマチ」と言っている病気です。これは、関節が痛くなったり腫れたりする病気です。これは、主に関節に症状がでます。ただ、関節リウマチは、関節の病気ではなく、免疫の病気であると認識することが重要です。免疫の異常により、本来自分の臓器である関節(滑膜)に攻撃をしてしまうのです。免疫は全身に張り巡らされています。関節リウマチは、主に関節の症状がでますが、他の臓器(眼、肺など)にも症状が出ることがあります。全身疾患(全身の臓器に症状が出る可能性がある病気)であると認識することが重要です。
ここまで総論としてお話ししてきました。
免疫の病気は複雑なこともあり、高血圧・糖尿病などの生活習慣病、腎障害、また骨粗鬆症などがあれば、それらとバランスを取りながら全身疾患として診ていくことが非常に重要です。
免疫が下がると感染症になりやすくなりますが、ここもバランスを取って薬を調整する必要があります。薬もそうですが、日常生活としてリズムよく生活し、適度な運動をすることも大切なことです(図3)。