【第1回】
ほくろのがんとは
皮膚がんは他の癌同様、高齢化社会に伴い近年増加傾向にあります。そのなかでもほくろのがんは悪性度が高く(転移しやすい腫瘍)予後が悪いと言われています。ほくろのがんとは悪性黒色腫という疾患でメラノサイトと呼ばれるメラニン色素を作る細胞やほくろの細胞ががん化したものと考えられています。その頻度は日本人は10万人あたり1〜2人と言われています。
病因
肺がんとたばこのように強い関係がある病因は知られていませんが、紫外線暴露は重要な発癌因子であることが証明されています。
発生部位
皮膚癌の多くは一般に日光にあたる顔面や四肢に発生します。悪性黒色腫も同様ですが日本人の場合は他の人種に比べ、足の裏にも多く発生すると言われています。ただ、皮膚のどの部位からも生じます。稀ではありますが網膜、脳、膣、大腸などに原発することもあります。
症状
足底の悪性黒色腫の早期病変
通常痛みなどはありません。初期の小型の病変はは通常の良性のほくろと区別が困難です。一部の例外はありますが、2-3年以内の変化の有無が大切で、ほくろだと思っていたものが
1.急に大きくなる、一部が盛り上がってきた
2.形がいびつで色にムラがある
3.出血がある
といった症状があるときは、悪性黒色腫を疑う必要があります。悪性黒色腫は皮膚のどの場所からも発生しえますが、見える部位に発生する疾患ですから早期発見がほかの臓器より容易な疾患です。
診断
種々のダーモスコピー機器
皮膚科専門医による診察(視診)が大切です。近年は、ダーモスコピーという、特殊な拡大鏡を用いて、肉眼では認識できないより詳細な構造を観察する検査により精度の高い臨床診断が可能になり、普及しています。この検査は開業医でも対応している施設が増えています。
左:前述の症例のダーモスコピーによる観察所見
右:良性のほくろのダーモスコピー像
臨床的に悪性所見が疑われる病変に対しては、病院に紹介し組織検査による病理診断の確定を行います。
治療
早期の場合は病変から5ミリ程度の離して切除するだけで治療が終了します。進行している場合はリンパ節廓清、化学療法、免疫療法など進行度により異なります。
早期発見が治療や予後を大きく左右します。杉並区医師会員で皮膚科を診療している医療機関はこちらをご参照ください。
http://www.sgn.tokyo.med.or.jp/search/list2.php?code=18
ダーモスコピーでの診断を行っているかどうかは、事前に各医療機関へお問い合わせ下さい。