病気の話

【第29回】
精神病について

 精神病とは、なんでしょうか?

 精神科医が日常診療で遵守しないといけない精神保健福祉法(精神保健及び精神 障害者福祉に関する法律)に規定第5条に示された病名では、「統合失調症、精神作用物 質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質 その他の精神疾患を有するもの」と記 載されております。

 ここには皆様が御存知の、うつ病、躁うつ病、神経症、認知症、てんかん等の具体的な病名の 記載は見当たりません、その他の精神疾患を有するものの範疇に入れられて解釈されているようです。

 精神科医が、精神保健福祉法に基き、日常診療で記載する公文書「精神障害者保険福祉手帳診断書」、 旧名称:外来公費負担軽減診断書(現名:自立支援医療―通院精神医療診断書)での、 病名記載欄にはICD10分類(WHOが定めた国際疾病分類)による病名が使われます。 精神障害者年金診断書でも同様でICD分類が使われます。

 ICD10分類病名に興味のある方は、http://www.dis.h.u-tokyo.ac.jp/byomei/icd10/F00-F99.htmlをご覧になってみて下さい。

 更に煩雑にしているのは、アメリカ精神医学会が刊行しているDSMとして知られ「精神障害の診 断と統計マニュアル」に基く診断名です。最新版は、DSM-5。

 更に更に煩雑になっているのは、最近の若い精神科医はDSMに基づく病名で診断するようです が、そこそこ、年配の精神科医は、ドイツ精神医学に基づく病名、例えば「神経症、対人恐怖症、 神経衰弱状態、抑うつ反応、心因反応、急性錯乱、精神病質(知的障害、性格障害等)、器質性 精神病、症状精神病、非定型精神病等」を使います。

 精神そのものが、医学的解剖的な局在の裏付けもないのに。更に、病名も医者の年代で様々、 「カオス状態」です。 診断も付かない精神病とは、どんな病気なのか、更に解らなくさせてしまい申し訳ございません。

 でも安心して下さい。日本の精神科医は非常に器用に、病名より病状で診療致します。 診断をする時には、上記の様々な診断基準の良いとこ取りをしている先生が多くなりました。 そのためには、診療時間は多く取り、患者さんの言葉を傾聴して、バックグランドを認識し、 どうして病状が起きたのかを考えて診療しております。 その結果、多民族国家であるアメリカ(そのためマニュアルDSMが必要)のような過剰に、安易に、不必要な投薬治療は行いません。

 失恋で落ち込まれ精神科を受診される時代になりました。DSM診断基準を使って診断すると、 時に適応障害+抑うつ状態、病状次第は単極性気分障害(うつ病のこと)。 その後、アメリカから始まり、全世界で主に使われている抗うつ剤系の新薬系のSSRIが処方される結末。 これはこれで、正しい診療で、患者さんは直ぐ良くなりますが、その後は、下手すると「うつ病」とレッテル貼りで、人生上で自信をなくされ、 月曜日の朝もうつ病と自己診断したり、SSRIの副作用で服用を止められなくなる問題も、起きてしまいます。

 私は、このような失恋ケースは、安易に診断せず、来院された患者様の性格及び家庭生い立ち環境等を聴取し、 患者様の人間関係の取られるパターンの元に、失恋になった経緯、恋愛対象者の、患者様からみた性格も聴取。 恋愛対象者の性格、人格要因が強ければ患者さんと悪口を言って、自責的になっている患者さんと怒りの感情を共有する治療をしております。 診断名は正常心理とお伝えし、原則処方はしないようにしております。

 区内には、現在20箇所以上の精神科診療所がございます。日々杉並区内の精神医療を担い、 皆様の健康に幾らかでも貢献できるよう研鑽しております。

 精神的に辛いことがありましたら、気楽に受診してみて下さい。


 
平成30年6月
野崎医院 野崎 純
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