病気の話

【第91回】
恥ずかしいけど・・・痛いんです・・・  〜萎縮性膣炎について〜

 クリニックや病院の婦人科外来には、たいてい問診票が所定の用紙や事前のweb入力などで用意されています。一般的な症状については羅列していますが、そこにあてはまらないものや、説明しにくい症状については空欄となることがしばしばです。
 特に、婦人科においては、内診など診察自体もデリケートなものなので、問診がとても重要になってきます。(性交渉の経験の有無は基本の質問です、経験ない方には、最初から内診の検査はしないか、ご本人と相談の上、リラックスしていただくよう最大限の配慮をいたしますのでご安心を)
 そんな中で、表題のような、「恥ずかしいのですが・・・」と前置きをして、痛みを訴える方がいらっしゃいます。珍しいことではありません。痛みは、通常、性交渉の際の痛みが多いですが、ご年配の方などは日常生活で、座るのも痛くて死にたくなってしまう、レベルの訴えもあります。

 萎縮性膣炎とは、聞きなれないかもしれませんが、以前は「老人性膣炎」という、なんとも失礼な病名で呼ばれていた疾患です。
 女性ホルモンが加齢や閉経により低下すると、膣や外陰部が乾燥して萎縮した状態になり、炎症を起こしたものです。雑菌への抵抗力も低下するため、感染を伴うこともあります。
 かゆみ、痛み、おりものやにおい、出血など症状はさまざまですが、場所が場所ですので、なかなか相談できないことが多く、長い間悩んでいらっしゃる方が多い印象です。
 婦人科では、当然、悪性の病気や感染症などがひそんでいないか、きちんと検査をしていきますが、そのような病気が見当たらない場合はこの診断となります。
 治療法は、基本的には低下した女性ホルモンを補うのですが、安全なのは膣に入れる女性ホルモンの錠剤です。局所に有効なので、必ずしも飲み薬まで使用しなくても症状が改善することが多いです。保湿効果のある軟膏や、潤滑ゼリーなどを併用していただくと、より効果が高いです。
 膣錠は、外来で挿入するだけでなく、ご自身で定期的に(毎日〜週1回など)自宅で挿入していただくと受診回数も減らせるので、診察所見と相談の上、患者さんごとに治療法をカスタマイズしています。
 また、最近では、メディアなどでもフェムケアなど膣のケア製品が話題になっており、膣マッサージなども有効なようです。
 さらに、自費診療になりますが、レーザーなどの器械で膣粘膜の栄養状態を改善したりして症状改善されるケースもあるようです。閉経後のみでなく、がん治療などで女性ホルモンの低下してしまった女性にも有効でしょう。

 このような症状でお悩みの方は、問診は空欄で構いません。ほんのちょっと勇気を出してご相談にお越しください。女性として、いつまでも元気に笑顔でお過ごしいただけるサポートをするのが私たち婦人科医の仕事です。いつでもお待ちしております。


 
令和5年10月
おぎくぼレディースクリニック(https://ogikubo-lc.com/
大野 智子
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