病気の話

【第95回】
頻尿・尿失禁について

1. 頻尿の原因と治療

 頻尿をきたす代表的な疾患は過活動膀胱、前立腺肥大症、夜間多尿です。

◆過活動膀胱
 この病気は、明らかな原因が無いにもかかわらず、突然の強い尿意を催し排尿の我慢が難しい状態になり、時に尿失禁を伴い、なおかつ日中もしくは夜間に排尿回数が多くなります。難しい検査は不要で、過活動膀胱症状質問票で診断します。但し、尿検査や超音波検査で膀胱炎や膀胱結石、悪性腫瘍などがないことの確認が必要です。膀胱の神経過敏が誘引となっているので、神経をリラックスさせる飲み薬が処方されることが多いです。薬だけでなく、自分で排尿をある程度我慢する行動療法も有効です。

◆前立腺肥大症
 前立腺は男性のみに存在する臓器で、膀胱の下(足側)に尿道を取り囲むようにあります。前立腺は加齢とともに腫大することが多く、尿道を圧迫して尿の通りを悪くしたり(排尿障害)、膀胱を刺激して頻尿を起こしたりします。それが前立腺肥大症です。膀胱への刺激だけでなく、排尿障害に伴い多量の残尿をきたし、有効な膀胱容量を減らして、頻尿の原因となったりします。国際前立腺症状スコアや尿流量測定検査、超音波検査などで診断します。狭くなっている尿道を広げる飲み薬や、膀胱や前立腺の血流を増やす飲み薬、前立腺そのものを小さくする飲み薬などが処方されます。時に過活動膀胱の治療薬も併用されますが、膀胱の神経がリラックスしすぎると残尿量が増えたり、尿が出なくなる(尿閉)ことがあるので注意が必要です。薬が効かない場合などは手術治療も行います。近年は尿道から器具を挿入するレーザー内視鏡手術などが主流となりつつあります。

◆夜間多尿
 夜間多尿は実は疾患名ではなく症状の名称です。夜間就寝中に腎臓で作られる尿量が増えてしまう症状で、夜間頻尿の原因の一つです。就寝中の尿量が24時間の尿量の3分の1を超えていたら夜間多尿です。水分の摂りすぎ、高血圧や腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などが複合的に原因となることもあります。ほかに加齢に伴って夜間の抗利尿ホルモン分泌量が減ることも原因となります。原因が多岐にわたり、治療が難しいことも多いです。水分摂取量の調整や、夕方の散歩などが有効なこともあります。

2. 尿失禁の種類と治療

◆切迫性尿失禁
 急に尿がしたくなり(尿意切迫感)、我慢できずに漏れてしまうのが切迫性尿失禁です。トイレにかけ込むようなことが起こりますので、外出や乗り物に乗っている時などにたいへんに困ります。脳血管障害などが原因となることもありますが、多くの場合、特に原因がないのに膀胱が勝手に収縮してしまい、尿意切迫感や切迫性尿失禁をきたしてしまいます。過活動膀胱や前立腺肥大症も原因となりますので、それらの治療薬を用いて治療をします。

◆腹圧性尿失禁
 女性に多く、出産や加齢に伴い尿道などを支えている骨盤底筋の働きが弱くなることで尿道をうまく締められなくなり、尿もれを起こす病気です。咳やくしゃみの時、笑った時、走った時、重いものを持ち上げた時などに尿がもれます。骨盤底筋体操や手術で治療します。

◆溢流性尿失禁
 排尿困難で尿を出せなくなり、膀胱にたまった尿があふれ出てきてしまう状態です。前立腺肥大症などが原因疾患として考えられます。先ずは尿道にカテーテルと呼ばれる管を留置して、のちに手術などで治療することが多いです。寝たきりの高齢女性にも認めることがあり、その場合、そのまま経過観察となります。

◆機能性尿失禁
 排尿機能は正常にもかかわらず、身体運動機能の低下や認知症が原因でおこる尿失禁です。例えば、歩行障害のためにトイレまで間に合わない、あるいは認知症のためにトイレで排尿できない、といったケースです。 この尿失禁の治療は、介護や生活環境の見直しを含めて、取り組んでいく必要があります。


 
令和6年2月
河北総合病院泌尿器科 (https://kawakita.or.jp/suginami-area/kgh/
村田 明弘
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