病気の話

【第6回】
小児の便秘

 便秘とは排便の回数が少なく、腹痛や排便痛、排便時出血などの苦痛や困難を伴い治療が必要な状態です。
 小児期の便秘は成長段階により成因と対応が異なります。原因のほとんどは特定の難しい特発性のものですが、 新生児期から乳児期早期の便秘は外科的な病気の頻度が比較的高く、乳児期後半以降には外科的な病気は少なくなります。

新生児期から乳児早期

 生まれつきお尻の穴が無かったり、位置がおかしいなどの明らかな奇形がある場合は生後すぐに発見されますが、 お尻の見た目だけでははっきりしない異常もあります。肛門膜様狭窄症やヒルシュスプルング病という病気がその例です。 肛門膜様狭窄症では完全に穴が閉じているわけではないので、便が緩めの新生児期〜乳児期早期にはある程度排便がありますが、 その後便が硬めに変わる頃に出にくくなり受診される場合も多いようです。 医師がお尻に指を入れてみた感触で診断され、そのまま指で肛門を拡げて治ってしまうこともあります。 
 ヒルシュスプルング病は生まれつきの腸管の神経の異常で腸の動きが悪いため、新生児期にお腹がパンパンになって発見されることが多い病気で 手術が必要な便秘の代表的な例です。治療は異常な腸管を切除して正常な部分を肛門につなげる手術をします。

乳児期後半以降

 稀に上述のヒルシュスプルング病や脊髄の病気などが見つかることもありますが、ほとんどは特定の原因のない機能性の便秘です。
 小児期の便秘発症のきっかけとして特徴的なものは、
@乳児期の母乳から人工乳への移行期や離乳食の開始など摂取物の変化期
A幼児期のトイレットトレーニングがうまくいかない場合
B学童期に学校での排便を我慢してしまう場合
の三つのタイミングがあります。
 重症の便秘では非常に硬い便が常に大量に直腸にあり、その周りを少しずつ液状の便が漏れ出てくるため、 下痢として誤った逆の治療が行われる場合があり注意が必要です。
 もし毎日便が出ていても、足をクロスさせて我慢する様子や排便時の出血があったり、見張りイボができたりするのは便が硬すぎる証拠で、治療の対象になります。
 機能性便秘の治療は食事・薬物療法が主体ですが、経過の長い重症の便秘では@「便が直腸に貯まる」A「便が太く硬くなる」 B「排便が苦痛になる」C「我慢してしまう」という過程を@→A→B→C→@と繰り返す悪循環に陥ります。 更に進行すると直腸の壁が引き伸ばされ便意を感じ難くなってしまい、また腸の動きも悪くなってますます便が溜まって大きくなります。 大きな便の塊があって栓になっている場合にはまず取り除く必要があります。直腸に硬い便があると、口から下剤を飲んでもお腹がゴロゴロして痛くなるだけで 結局排便はないということがありますので浣腸や座薬または便を直接ほじったりするお尻からのアプローチが好ましいと考えられます。
 経過の長い激しい便秘には正しい治療が必要ですので、まずはかかりつけの医師にご相談下さい。



 
平成27年2月 柿田医院 柿田豊
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