病気の話

【第24回】
RSウイルス感染症

 近年、報道で耳にすることが多くなってきたRSウイルス感染症について解説したいと思います。

 RSウイルス感染症(respiratory syncytial virus infection)は、RSウイルスの感染による 呼吸器の感染症です。感染している人が咳やくしゃみ、又は会話をした際に、飛び散るし ぶきを浴びて吸い込む飛まつ感染や、感染している人との直接の濃厚接触、ウイルスがつ いている手指や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、椅子、おもちゃ、コップ等)を 触ったり又はなめたりすることによる間接的な接触感染などで感染します。RSウイルスは 日本を含め世界中に分布しています。

 何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100% の児がRSウイルスに少なくとも1度は感染するとされています。症状は、軽い風邪症状か ら重い肺炎まで様々です。初めて感染発症した場合は重くなりやすいといわれており、乳 児期早期(生後数週間〜数カ月間)にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎、肺炎 といった重篤な症状を引き起こすことがあります。

 また、RSウイルスは高齢者においても急性のしばしば重症の下気道炎(気管支炎や肺炎 )を起こす原因となることが知られていて、特に長期療養施設内での集団発生が問題とな る場合があります。
 一方、年長児〜成人は、風邪症状程度で済む場合も多く、RSウイルス感染症とは気付か れず周囲に伝染させてしまっていることがあります。

 RSウイルス感染症には特効薬やワクチンはなく、基本的に対症療法(症状を和らげる治 療)のみとなります。そのため、重症化しやすい乳児や高齢者のケアをする方々が、手洗 いやマスクをして感染予防をすることが大事になってきます。


 
平成30年1月 たかはしこどもクリニック 院長 高橋悦郎
(診療所 URL http://www.takahashi-kodomo.jp/)
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