病気の話

【第46回】
乳がんについて:その1(乳がんの疫学、検査編)

1.乳癌の疫学

 現在女性がかかる癌の中で最も多いのが乳がんです。毎年増加の傾向にあります。40-50歳代が最も多く60歳代から徐々に減少します。 生涯で乳がんになる割合は女性の14人に1人まで増加しました。乳がんは比較的予後のよい癌で死亡率は大腸がん、肺がん、胃がん、すい臓がんについで5番目です。

2.乳癌の原因

 乳がんの発生要因には様々なものがあります。よくいわれる、遺伝的因子ですが、第1度近親者(親、姉妹、子:遺伝子が1/2)に乳癌罹患者がいる場合は、 乳がんになる確率で2〜2.3倍のリスクがあります。第2度近親者(祖母、孫、叔母、姪:遺伝子が1/4)に乳癌罹患者がいる場合は1.5倍のリスクがあります。 近親者の乳癌患者の数が多くなると、その分リスクも上昇します。よく話題になるホルモン補充療法ですが、エストロゲンと黄体ホルモン併用療法においては、 5年以上の長期投与により、乳がんの発症リスクが増加することがわかっています。一方経口避妊薬(OC)や月経困難症に用いる 低用量エストロゲン・プロゲステロン配合薬(LEP)に関しては乳がんの発症リスクは増加しないことが証明されています。 また乳がんは初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がない方もリスクが高くなるといわれています。

3.乳がんの自己検診

 乳がんの検査には自己検診、医師による視触診、超音波検査、マンモグラフィーなどがあります。 乳がんは唯一自分で触って見つける可能性のある癌です。月に一回程度は自己検診を行いましょう。 また自分でしこりなどを触れた場合はすぐに専門の施設にかかる必要があります。 他には症状として乳房にくぼみがあったり、乳頭から分泌物(特に赤や茶や黒い場合)が出るとき、 乳房の皮膚の色が赤かったり、オレンジっぽいときにはすぐに受診しましょう。

4.乳がん検診

 乳がん検診は非常に有用です。杉並区では40歳から区乳がん検診としてマンモグラフィーの検査が受けられます。 40歳から50歳までは縦横2方向、50歳以上は縦1方向にて撮影をいたします。 マンモグラフィーは手で触れない石灰化を伴う早期がんを見つけるのには非常に優れています。 日本、海外でもマンモグラフィー検診を行うことにより、乳がん死亡率の減少につながることが立証されています。 杉並区ではまだ導入されていませんが、他の自治体では超音波による乳がん検診も実施されています。 超音波は痛みや被爆もなく、妊娠中でも行える安全な検査ですが、検査者による優劣もあり、 検診としてまだ普及していないのが現状です。マンモグラフィー、超音波にて癌の疑いがある場合は、細い針を腫瘤に刺して、 組織診(細胞をとって顕微鏡で観察します)を行い、癌であるかないかを調べます。乳がんであった場合は治療が必要です。 次回は治療についてです。


 
令和元年12月
久我山クリニック(www.kugayama-cl.com/
八木美徳
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