病気の話

【第21回】 感染症から身を守るために
“どうして手洗い、マスク着用、人混みを避けることが重要なのか?”

 インフルエンザ、マイコプラズマ、ノロウイルス、麻疹などに関する報道が増え、 身近な感染症に対する区民の皆様の関心も少し高まっているように思います。 そのような話題が出ると必ず、手洗い、うがい、マスクの着用、人混みを避けるといった文言を耳にしますが、 そんなことで本当に予防になるのかと半信半疑な方もいらっしゃると思います。 今回は、何故それが予防に重要なのかを述べたいと思います。

 まず「感染症」とは、ウイルスや細菌などの病原体が人間の体内に侵入し、発育又は増殖し、症状が現れた状態のことをいいます。 そして人に感染していくルートを感染経路と呼びます。 感染経路には飛沫感染、空気感染(飛沫核感染とも言います)、接触感染、経口感染といったものがあります。

 飛沫感染とは、咳やくしゃみ等で口から飛ぶ病原体が含まれた小さな水滴(飛沫)を近くにいる人が吸い込んで感染するものをいいます。 飛び散る範囲は1〜2mです。 インフルエンザやマイコプラズマなどの呼吸器感染症を引きおこす多くの病原体がこれに含まれます。 人ごみや職場・学校・幼稚園などで近隣にいる人から感染するケースが多く、狭い空間で流行しやすいと考えられます。 インフルエンザで学級閉鎖が起こりやすいのもそのためです。

 空気感染(飛沫核感染)とは、飛沫が乾燥したあとも、芯となっている病原体が感染性を保ったまま空気の流れによって拡散し、 近くの人だけでなく、遠くにいる人にも感染します。麻疹、水痘、結核がこれに含まれます。 したがって、飛沫感染と比べて感染は拡大しやすく、感染力の強い病原体ということになります。 昨年の関西空港での麻疹の流行も、広い空間にウイルスが拡散したために発生したということになります。

 接触感染とは、病原体が付着している手すり、ドアノブ、遊具などを介して自分の手や皮膚に病原体を付けてしまい、 その病原体を口や鼻、眼を触ったりした際に感染するものをいいます。 ノロウイルスではお子様の嘔吐物や下痢便のついたおむつなどの処理をした親御さんが、手に残ったわずかなウイルスを口に運んでうつってしまいます。 小さいお子さんに細気管支炎や肺炎を引き起こすRSウイルスでは、鼻汁や痰などを拭き取ってあげた際に手についたウイルスを、 他のお子さんの目や鼻などの粘膜を触れることでうつしてしまっています。

 経口感染とは、病原体を含んだ食物や水分を経口摂取することで感染します。 前述のノロウイルスや食中毒の類がこれに含まれます。 ノロウイルスによる集団食中毒例では、調理した人の手に残っていたウイルスが食材に付着させてしまうことで発生しています。

 このように色々な感染経路があり、すべてを予防することはできませんが、人ごみを避けることで飛沫が届かない距離を保つことが出来ます。 しっかり手洗いをし、付着しているウイルスを完全に洗い流すことで接触感染や経口感染のリスクを減らすことが出来ます。 マスクは喉の乾燥を防ぐだけでなく、飛んできた飛沫に対するある程度のフィルターになりますし、 手についたウイルスを無意識に口に運ぶ機会も減らすことが出来ます。 手洗い、うがい、マスクの着用、人混みを避けることを意識して行うことで意外と感染症から身を守ることが出来ますので、 区民の皆様も是非心がけていただければと思います。


 
平成29年2月 たかはしこどもクリニック 高橋悦郎
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