病気の話

【第83回】
耳のかゆみや痛み

 コロナウイルス感染症が流行してから3年が経過し、テレワークやオンライン授業の普及によりヘッドホン・イヤホンを使用する機会が増えました。このためか耳のかゆみや痛みを訴えて来院される方が多くみられるようになりました。

 多くは外耳道炎 外耳道湿疹によるものですが、かゆみにより掻きむしってしまい痛みが強くなって腫れたり 膿のような液体(耳漏)がでてきてしまうこともあります。 症状がなかなか改善しない場合や繰り返すときは注意が必要です。

 主な原因としては習慣性の耳掃除や過剰な耳掃除が挙げられます。
 毎日のように耳掃除をする必要はなく、耳の中を掻く・こする動作が外耳道のバリア機能を低下させ、かゆみを誘発します。
 長時間のイヤホン・ヘッドホンの使用による耳の中の蒸れ、外耳道への機械的な刺激も同様です。
 またアレルギー疾患もバリア機能の低下を招くため、花粉症のある方は花粉が多い時期には注意が必要です。

 バリア機能は外界からの刺激を防ぐ作用があるため、低下するとよりかゆみが増します。このためさらに掻くことにより外耳道から細菌などの感染を引き起こし、炎症を起こしてしまい痛みや耳漏が生じます。
 さらに炎症が強くなると、外耳道が腫れてしまい閉塞感や難聴を訴えて来院されることもあります。

 より注意すべき外耳道真菌症というカビが生える病気のこともあります。
 普段から真菌や細菌は皮膚の上で共存しており、何もなければ炎症を起こしたり悪さをすることはありませんが、バリア機能が低下すると繁殖して炎症を起こしてしまうことがあります。
 真菌が原因の場合は再発しやすく長期にわたることもあるため根気よく治療をする必要があります。最近の夏は大変気温が高くまた湿度も高いため、増えている印象を受けます。

 普段から耳掃除の習慣のある方は頻度を2週間に1度程度を目安に減らしてみてください。また、イヤホン等の使用方法・時間を今一度見直してみてください。

 耳のかゆみや痛みは中耳炎をはじめとして隠れている病気はこの限りではないので、おかしいなと思ったらお近くの耳鼻咽喉科を受診してみてください。


 
令和5年3月
いおぎ耳鼻咽喉科
高木 真紀
↑ページの一番上へ