病気の話

【第50回】
眼瞼下垂について

はじめに

 今回は眼瞼下垂という眼科疾患のお話です。
 眼瞼下垂は最近では芸能人も手術していることを公表するなど見聞することが多くなってきておりますので、よく知っていただけると幸いです。

1. 眼瞼下垂とはどんな病気?

 眼瞼下垂は、眼瞼(まぶた)が下がってくることにより視機能が障害される病気です。まぶたは、引っ張り上げる筋肉群(眼瞼挙筋、ミュラー筋)とそれらを支配する神経(動眼神経、交感神経)によって開くことができるようになっています(図1)。これらが何らかの原因で障害されると挙げにくくなります。大きく先天性と後天性に分けることができます。

 先天性はまぶたを引っ張り上げる筋肉(眼瞼挙筋)が生まれつき少なかったり、発育障害によって生じます。後天性は、まぶたを引っ張り上げる筋肉が引き延ばされてしまう腱膜性、重症筋無力症など筋肉自身に障害が出ることによる筋原性、動眼神経麻痺など筋肉を支配する神経に異常がある神経原性に分けることができます。後天性眼瞼下垂の場合、加齢による腱膜性の眼瞼下垂が一番頻度が多いですが、最近ではコンタクトレンズの長期装用による眼瞼下垂も増加しています。


図1


2. 眼瞼下垂はどうやって診断する?

 眼瞼下垂の診断は、基本的に視診で診断が可能なことが多いです。典型的には黒目にまぶたがかかってしまう、眉毛(まゆげ)の挙上、おでこのしわの増加、上まぶたの縁から眉毛までの距離が長くなる、眼精疲労、視野の障害(特に上のほうが見にくい)、頭痛など多彩な症状が出てくることが多いです。外来で診察するときは、昔の写真(正面)があると現状と比較することができるので持参していただくと診断がつきやすいです。

 先天性眼瞼下垂は、出産後数日たっても目の開きが悪いことでわかることが多く、産婦人科や小児科で指摘されることが多いです。軽度の場合は、判断がつかないことがあり眼科で初めて指摘される場合もあります。また、子供の弱視や斜視で眼瞼下垂が診断されることもあります。

 あまり頻度は多くありませんが、重症筋無力症による眼瞼下垂は、通常の所見以外に一日の中で眼瞼の状態が変動する日内変動を認めることがあります。また動眼神経麻痺による場合は、突然の片眼の眼瞼下垂や複視が出現し脳動脈瘤などの脳内疾患による原因の場合もあります。

3. 眼瞼下垂の治療はどうする?

 眼瞼下垂は物理的に下がっているため、手術によって治療を行うことになります。手術方法のバリエーションは非常に多いのですが、眼瞼挙筋群を短くする方法、眼瞼挙筋以外の筋肉(前頭筋など)を使って改善する方法に大別されます。

 現在、わが国では眼瞼下垂の治療は眼科、形成外科、美容外科で行われています。眼科では眼瞼挙筋を短縮する方法がほとんどで、形成外科では挙筋短縮以外の方法(前頭筋つり上げなど)も行っていることが多いです。

 一例として当院で行っている方法を紹介します。成人は日帰り手術で局所麻酔で行います。子供(おおよそ小学生まで)は全身麻酔で行います。手術時間は片目おおよそ30分から45分くらいです。手術後、約1〜2週間程度腫れる可能性があることと、細かい腫れは数か月かかる事は手術前に話してあります。

 手術は、麻酔後もともとある二重の線に沿って切開し、その下にある組織をはがして眼瞼挙筋群をだします。眼瞼挙筋群が付着している瞼板(軟骨組織)からはがし、5mm程度必要量を短くして瞼板に縫い付けます。皮膚が余っている場合は同時に切除を行います。その後、皮膚を縫合して終わります。手術中に止血を十分行うので、術後出血はあまり起こらないことが多いです。縫合した糸は1週間後に抜糸します。(図2、図3)


図2(左先天性眼瞼下垂(術前、術後))

図3(両眼老人性眼瞼下垂(術前、術後))

4. 最後に

 眼瞼下垂は治療することが可能な疾患ですので、一度近くの眼科にご相談されることをお勧めします。


 
令和2年4月
かねこ眼科 (https://kanekoganka.jp
院長 金子博行
↑ページの一番上へ