病気の話

【第5回】
前立腺がんについて

前立腺って?

 前立腺は男性にしかない臓器です。 膀胱にたまった尿は前立腺のまん中を通って排尿されます。 この部分が大きくなって尿道が圧迫を受けて狭くなり、いろいろな排尿の症状が出る病気が前立腺肥大症です。 でも、今回の「病気の話」は、同じ前立腺という臓器にできるがんの話です。

前立腺がんが増えています

 あまり知られてないかもしれませんが、この数年、日本人に前立腺がん患者が増えています。 その傾向は将来まで続き、2020年の東京オリンピックのころには、男性のがん患者の中で2番目に多いがんになると予想されています。
 前立腺がんの症状は、血尿や排尿時の痛みなどです。 しかし、これらの症状はがんがかなり進行してからでないと現れません。早期から中期にかけては自覚症状が出づらいのです。 ですから、症状が出始めてから病院に行くのではなく、症状が出る前に検査を受けることが望ましいと言えるでしょう。

PSAを知っていますか?

 前立腺がんを早く見つけるための有効な手段が、PSA(前立腺特異抗原)の採血です。 採血でPSA値を調べることにより、80%の確率でがんを見つけることができます。
 前立腺は精液の通り道でもあります。そのため、前立腺には精液の成分をつくる細胞が存在します。 PSAは、その細胞からつくられる酵素のひとつで、正常な状態でも血液の中に分泌されています。 しかし、前立腺がんに罹ると、より多くのPSAが血液の中に放出されるのです。血中のPSA値が4ng/mlを超えると、前立腺がんの可能性が出てきます。 値が高くなれば高くなるほど、その可能性は高くなります。 一方で、がんではない前立腺肥大症や前立腺炎などでも、前立腺にストレスがかかることで、血中PSA値が上昇することがあります。

検診のすすめ

 年齢別の統計を見ると、前立腺がんの患者数は50代前半から増え始めます。 そして60代、70代と年をとればとるほど、患者数は増えていきます。 一般的にPSA検診は、特に症状がない40〜50代の男性であれば人間ドックや住民検診などで、症状があれば保険診療で受けることができます。 その年代になったら一度考えてみてはいかがでしょうか。
 年齢以外にも、前立腺がんには遺伝的な要因があり注意が必要です。 親や兄弟のうち1人が前立腺がんに罹っていれば、自分も前立腺がんに罹る危険性は2倍になると言われています。 2人いれば5倍、3人いれば11倍にまで上がります。思い当たる場合は、早めの検診をおすすめします。
 PSA検診は定期的に受けるのが効果的です。 あくまでも目安ですが、前回のPSA値が1ng/ml以下であれば、次回の採血は3年後に、1.1〜4ng/mlであれば、1年後にまた受けるのがよいと思います。

 

平成27年1月 立正佼成会附属佼成病院 泌尿器科 部長  冨田 雅之
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