病気の話

【第3回】
花粉症について

花粉症とは?

 花粉症は、花粉によって生じるアレルギー疾患の総称です。 原因となる植物はさまざまですが、主に春はスギ・ヒノキ、初夏はカモガヤ、秋のブタクサの花粉が原因となります。 私たちの体はウィルスや細菌などの異物が侵入すると、それを退治するための抗体を作ります。 しかし、本当は反応しなくてもいい身体の外の物質に対して過剰に反応して抗体を作ってしまい、退治しようとしてしまうことがあります。 それがアレルギーです。花粉といった原因物質にさらされることで、次第に身体の中で抗体が増え、ある日花粉症を発症します。 発症してしまうと、原因物質を吸い込むたびに、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりといった症状が出るようになります。

花粉症かな?と思ったら

 このくしゃみは風邪?それとも花粉症?
 花粉症はよく長引く鼻かぜと間違われることがあります。春先の長引く鼻かぜに悩まされる人はスギ花粉症を疑ってみる必要があります。以下に花粉症を疑うポイントを挙げてみます。
1.典型的な症状
 くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみが、花粉症の四大症状です。くしゃみは風邪よりも連続して起こり、回数が多いのが特徴です。 鼻水は風邪の鼻水が時間とともに粘っこい黄色い性状に変化していくのに対し、何日たってもサラサラです。 また、風邪ならばこれら鼻の症状がせいぜい1週間で治まるのに対し、花粉症ならば花粉の飛散している期間ずっと続くのです。
2.特有の症状がある一定の季節に現れる。
 花粉症であれば、その原因となる植物の開花時期にだけ症状がでるのが特徴です。もし1年中症状が出るのであればハウスダスト・ダニアレルギーを疑います。 合併している人もいますが、そのようなケースでも花粉症の人はその花粉が飛散する時期に症状が悪化します。

耳鼻咽喉科に行くとどんな検査をするの?

 診断をきちんとつけることが治療への第一歩です。花粉症の検査には以下のものがあります。
1.鼻水の顕微鏡検査
 花粉症はアレルギー性疾患です。アレルギーが原因の症状の場合は鼻水の中に好酸球というアレルギーのときに見られる細胞が増えます。顕微鏡で細胞の数を数えます。
2.血液検査
 血液検査をすることで原因物質に対する抗体が高くなっているか分かります。原因物質をきちんと調べることは原因物質を避ける上でとても大切です。 また、単に陽性かどうかだけでなく、6段階評価で自分のアレルギーの強さが分かるので、薬による治療をするときにどのくらい強い薬が適しているか判断できます。 原因がスギなのか、ヒノキも合併しているのかを判別することで何カ月薬を飲むべきかが判断できます。 スギ花粉症と思い込んでいて、実はハウスダストやダニのアレルギーだった、なんて患者さんもいらっしゃいます。
3.鼻の視診
 鼻の粘膜の色や、鼻水の性状を観察します。スギ花粉症では鼻の粘膜が薄赤に、ハウスダストが原因のアレルギー性鼻炎の患者さんでは蒼白になることが多くなりやすいのです。 また、鼻水に黄色の膿が混じっていないか観察し、副鼻腔炎を合併していないか調べます。

自分で出来る花粉症対策

 治療の基本は花粉を吸い込まない事、浴びない事です。原因物質を吸い込むたびに抗体の量も増えてしまいます。 マスクを掛ける事で吸い込む量が減り、現時点での症状を軽減するばかりでなく、未来の抗体の量も減らせます。
 また洗濯物を外に干さない、窓を開けない、まめに掃除機を掛ける、床は雑巾で拭き掃除をする、といった家の中の対策が大事です。 一度入り込んだ花粉は1週間は出て行きませんので、家に入れない事が大事です。 外出時は髪の毛はまとめる、帽子をかぶる、ツルツルした生地の服を着て家に入る前に花粉を払うことも効果があります。

薬を使った花粉症の治療はどんなものがあるの?

1.初期療法
 原因物質により鼻の粘膜にいる肥満細胞が刺激されると、ヒスタミンを中心とした化学物質を沢山放出します。 この化学物質がくしゃみ、鼻水、鼻づまりを引き起こすのです。アレルギー性鼻炎の薬のうち、この化学物質の放出を抑制する効果が高いものを、予防投与する方法があります。 花粉飛散開始直前から開始しきちんと飲み続ける事で、期間中の症状が軽くなり罹病期間も短く済むといった効果が期待できます。
2.抗ヒスタミン薬
 血管や神経にあるヒスタミン受容体をブロックするのが抗ヒスタミン薬です。すぐに効果が発現しますが、眠気や咽の渇き、おしっこが減るなどの副作用が起こる事があります。 本格飛散が開始してしまってから来院された患者さんには、第一選択薬として処方されることが多いお薬です。最近は眠気の発現を抑えた新しい抗ヒスタミン薬も出ています。
3.ステロイドの点鼻薬
 アレルギーによる炎症を抑えたり、アレルギーそのものを抑える薬の中で、最も強力なのがステロイドです。でもステロイドは副作用が怖いというイメージが強いと思います。 そこで登場したのが鼻局所投与のステロイドです。鼻局所に働いたあとは、すぐに無害な物質に分解され、全身に回りませんので、安心して比較的長期に使用することができます。 最近では1日1回の投与で十分な効果が期待できるものも出ています。

杉並区医師会員で耳鼻咽喉科を診療している医療機関はこちらをご参照ください。
http://www.sgn.tokyo.med.or.jp/search/list2.php?code=16


 
平成25年2月 井上耳鼻咽喉科 井上里可
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