病気の話

【第26回】
外反母趾

 外反母趾とは外観上、母趾(足の親指)が外側を向いた状態のことを指します。 女性に多く発症しハイヒールが原因と考えている方が多くいらっしゃると思いますが、靴の様な外的要因に加え、 骨の形や靱帯などの軟部組織の状態等内的要因も大きく関与していると考えられています。

症状

 外反母趾の症状も様々です。典型的なものは内側に出っ張った母趾の付け根の部分(バニオン)の痛みですが、 そのほかにも変形によって様々な症状があります。
 母趾の外反が強くなれば母趾以外の指にも趾先部から短縮方向の力が加わり槌趾変形(鷲の爪のように曲がった状態)をきたすことがあります。 槌趾変形をきたすと近位趾節間関節(いわゆる第2関節)の背側が靴にあたって “タコ” できます。 また中足骨頭が足底側(土踏まずの前方部分)に突出し歩行時に痛み(足の裏の“タコ”)が出るようになります。 そのほか中足骨の手前の足の甲の部分(土踏まずの中央部分)の関節が傷んで痛みが出たりすることもあります。

 すなわち“外反母趾”は必ずしも母趾だけの病気ではありません。“外反母趾”は足の先の部分から足の甲に至る骨格のバランスが崩れた状態と言えます

治療

 外反母趾の治療を考える前に、患者さんが足のどこに痛みを訴え、どのような変形を呈しているのか観察しなければなりません。
 保存的治療と言われる手術以外の療法と、外科的手術と大きく2つに分けられます。
 一般的に変形を矯正することが出来るのは外科的治療のみと考えられています。では、保存的治療と外科的治療の適応はどうなっているのでしょうか?

  手術以外の治療法は、主に痛みを緩和させることを目的とした、装具療法が主体となります。や指の股に挟む装具や靴の中敷きなどがあります。
 では、外科的治療、つまり手術をしなければならない場合とは、どういう時なのでしょう?
 実際には、絶対的な基準はありません。
 それでも、例えば痛みが強くて保存的治療が難しいような場合や、親指だけではなく他の指にも痛みや変形などの症状が出ている場合などは、  手術を検討した方が良いことがあります。
 
 さて、外反母趾の手術にも色々なものがありますが、基本的には矯正骨切り術(変形の原因となっている骨を  手術でいったん骨折させてそれをまっすぐに?ぎ直す手術)が中心となります。
外反母趾の変形は指の先端が外側を向いてしまった状態が目につきやすいと思いますが実はそのもっと手前の骨(中足骨)が内側に向いてしまい、 指の部分の骨が外側を向いてしまった結果“くの字”の変形を生じているのです。 すなわち内側を向いている中足骨を外側に向くように骨を切り直すことにより変形を矯正しようとしている訳です。  

当院での治療

 骨切りの方法は様々な方法がありますが当院では、『スカーフ法』と呼ばれる治療法を行っています。  
 この“スカーフ”横から見てZの形に中足骨を切ることからこのように呼ばれています。  
 スカーフ法は大きく分けて2つの手技からなります。  
 1、中足骨の骨切り(“くの字”の手前部分を外側に向ける)。  
 2、外側の軟部組織の剥離(“くの字”の先端部分を内側に向ける)。  
 様々な術式の中でも、スカーフ法は、切った骨がガッチリと固定されるため安定性が高い術式です。  
 また、術後1日目から動かせる範囲での訓練を開始でき、2日目からは装具を付けての歩行が可能となります。  
 
 もちろん、人それぞれの症状によって異なりますので一概には言えませんが、入院期間も3〜5日程度と短く済み、  親指のみ手術された場合は1ヶ月、他の指も手術された場合は1ヶ月半程度で、通常の靴での歩行ができるようになります。


 
平成30年3月 荻窪病院 整形外科
早稲田明生、 河野 亨
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