病気の話

【第20回】
肺炎球菌ワクチンには2種類あることをご存知ですか?

一般的に、65歳を過ぎると、肺炎に罹患するリスクが高まります。 肺炎球菌は、日常でかかる肺炎(市中肺炎)の中で最も多い原因菌として知られています。 また、毎年冬季に大流行するインフルエンザに罹患すると、2次感染として肺炎球菌に罹患する確率が高いことも知られています。 このような感染症を予防するために、65歳を過ぎたら肺炎球菌ワクチンを接種することが非常に重要です。

 現在、日本では65歳以上の方で、定期接種費用の一部を公費で負担できる 23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(商品名:ニューモバックス)(以下ニューモバックス)と、任意接種の 沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(商品名:プレベナー)(以下プレベナー)、上記2種類の肺炎球菌ワクチンの使用が可能です。
ニューモバックスは、23種類の血清型に対応しており、定期接種(65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳)または 任意接種が可能です。5年経つと効果が弱まるので、5年ごとの接種が勧められています。
プレベナーは、13種の血清型に対応しており、任意接種が可能です。 ニューモバックスと異なり、プレベナーは一度接種すれば身体に免疫記憶がつくので、1回の接種のみで構いません。 また、そもそも生後2か月から6歳未満の小児に定期接種されているワクチンですので、高齢者の方も安心して接種することができます。 小児と異なり、成人では筋肉注射で接種します。

 この2種類の肺炎球菌ワクチンを接種することで、肺炎球菌による肺炎の予防効果はより高められると考えられています。 65歳以上という年齢に加えて、脳梗塞や糖尿病、慢性心疾患、慢性肺疾患、気管支喘息などの基礎疾患があると、 肺炎にかかるリスクは更に上昇します。特に気管支喘息や肺気腫(COPD)、間質性肺炎などの呼吸器疾患をもともと患っている方は、 肺炎球菌ワクチンと、冬季のインフルエンザワクチンの接種は必須です。肺炎球菌性肺炎や、インフルエンザに罹患することによって、 もともとの呼吸器疾患が増悪し、呼吸機能が更に低下、生命予後に悪影響を及ぼす可能性があります。

 上記2種類のワクチンですが、具体的には、

@65歳以上の方で定期接種のニューモバックスを既に接種されている方は、2回目のニューモバックスの前にプレベナーを接種することをお勧めします。 ただしニューモバックス接種後1年以上経過していることが条件です。プレベナー接種後半年以上経過すれば、 いつでも2回目以降のニューモバックスの接種は可能です。 ただし2回目のニューモバックスは前回のニューモバックスから5年以上経過していることが条件です。

A65歳以上の方で定期接種のニューモバックスをまだ接種されていない方は、 ちょうど定期接種年齢(65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳)であれば、 定期接種であるニューモバックスを先に接種された方がよいでしょう。 ニューモバックス接種後1年以上経過したら、プレベナーを接種することをお勧めします。 定期接種年齢以外の方は、先にプレベナーを接種したほうが良いでしょう。 その後半年以上経過してから、定期接種のニューモバックスを接種しましょう。

 毎年冬季に多くの方が接種されているインフルエンザワクチンですが、これも非常に重要なワクチンです。 肺に基礎疾患がある方は、毎年のインフルエンザワクチン接種は必須とも言えます。 先に述べましたように、インフルエンザに罹患すると、2次感染として肺炎球菌に罹患する確率が高いことが知られています。 インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンは、両方同時に接種しても、抗体はきちんと身体に作られることが証明されておりますので、 インフルエンザの流行するシーズンで、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを両方とも未接種の65歳以上の方は、是非同時接種もご検討下さい。
 成人の病気では数少ないワクチンの1つである「肺炎球菌ワクチン」を接種することで、 是非皆さん、肺炎の予防に努め、健康寿命を延ばしましょう。当院ではニューモバックス、プレベナー共に、 特に予約の必要はありませんので、どうぞお気軽に御相談下さい。その他ご質問等有れば、いつでも御連絡下さい。


 
平成29年2月 こじま内科 小島 淳
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