病気の話

【第22回】
手あれ、ひび割れ

 日常の生活の中で軽い手あれを経験したことのある方は多いと思います。手あれはあまり放置しておくと、ひびわれなどによる痛みを伴うようになり、 日常の仕事に支障をきたすこともしばしばあります。 手荒れの症状、病因、治療、スキンケアを知っておくことは大切なことといえます。 手荒れは医学的には進行性指手掌角皮症、主婦湿疹、手湿疹と呼ばれ、症状によっては専門医の受診が必要になります。

 手荒れはなぜ多いのでしょうか。我々は家庭や職場、趣味そして遊びにおいても常に手を使い、 周りにある様々のものに触る可能性があり、このことがその要因と考えてよいと思います。

症状

 手荒れで通常みられる症状は1)手のしっとり感がない、カサカサする、2)指紋の消失3)症状の高度なものでは亀裂(ひび割れ)等があります。 手の湿疹・皮膚炎では1)発赤2)鱗屑(カサカサ)3)腫脹4)少水疱がありかゆみを伴うことが多く指先だけではなく 手掌、手背にも変化がみられることもしばしばあります。すべて手湿疹という呼び方をしてもかまいません。

原因

 すでに述べたように手は常に物理的、科学的刺激にさらされています。我々の皮膚は最外層に皮脂膜があり、 次に角層という物理化学的に抵抗力のある層、更に生きている皮膚の細胞からなっています。 洗剤その他の刺激が繰り返すことにより皮表の脂質膜が損なわれ、角質の水分保持能力が低下します。 この為皮膚の防御能力が低下し外からの物理化学的刺激に対して弱くなります。この結果外からの様々な物質が侵入し易くなり、 この結果アレルギー反応等が生じ上記の様な手の湿疹を起こすことになります。 簡単に言えば城とその周りにあるお濠を考えてください。お濠に水がなく、城壁が一部壊れていれば外からの侵入が可能になると思ってください。 敵が場内に入れば場内の兵隊が迎え撃ち戦いが始まりますが、これがアレルギー反応でその結果が手湿疹となるわけです。
 繰り返す外的刺激の主なものとしては台所用洗剤、洗濯用洗剤、石鹸、等があり植物、ほこり、金属、革製品、セメント、  美容用品、塗料、インク、ゴム(時に炊事用手袋もあり得る)、コピー、食料品、その他日常に家庭・職場で触れる多くのものが  湿疹・皮膚炎の原因になりえます。アトピー性皮膚炎の方は手あれも起こしやすいので注意してください。

治療法

 軽度のものは尿素軟膏、保湿剤、ワセリン等、そして赤い、かゆい、小水疱等があるといった方はステロイドの軟膏が良いと思います。 何を使うかは皮膚科専門医を受診し相談して下さい。原因究明の相談ができますし、日頃のスキンケア―も指導してくれます。

予防法

 家庭、職場での手に対する刺激が原因ですから、手袋を用途に応じて使用して下さい。 ほこり、植物等はそれぞれ綿の手袋、庭用の手袋を、水周りはプラスチック手袋(100枚入りディスポーザブルが1000円程度で手に入ります)、 これらをめんどうくさがらずに使用し、洗剤などは薄めに、又お湯も手の保湿分を除いてしまいますから、冷たくない程度のお湯がいいでしょう。
 長い間手荒れが治らない、最近ひどくなり赤くなり、かゆみもある等という症状の方は一度皮膚科専門医を受診して、相談してください。


 
平成29年5月 皮膚科 種田医院 種田明生
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