病気の話

【第100回】
足の水虫、爪の水虫

 皆さんはよく足の裏が痒いから水虫、爪が白く濁ってきたから爪の水虫と思いがちだと思います。またドラッグストアに行くと、色々な種類の水虫の薬が売っています。
 水虫は正確には白癬と言われ、白癬菌というカビが原因です。実は水虫に似ている病気は複数ありますので、自己判断はせず、まずは近くの皮膚科専門医を受診してください。
 自己判断で薬局の水虫の薬を買ってつけていたら、ひどいかぶれを起こした例もありますので、自己判断は禁物です。

検査

 皮膚科専門医の所に行くと、まずは皮膚や爪の一部をピンセットなどで採って顕微鏡検査を行います。皮膚科医は白癬菌を直接顕微鏡で見つける事ができます。水虫の治療は長くかかるので、最初に確実な診断をつけておく事が重要です。

症状

 足の水虫は、足の裏の皮が剥けたり、赤みが出たり、小さな水疱ができたりします。
 痒みを伴う事が多いですが、中には足の裏が硬くなるだけで全く痒みのないタイプもあります。爪の水虫は、爪が黄白色や黒色に濁って見えたり、厚ぼったくなったり、脆くなる特徴があります。混濁がくさび形に見える事もあります。  


初診時 爪に楔上の白濁あり(出典:自院)

外用6か月後(出典:自院)


鑑別診断

 足の水虫に似た病気として、汗疱や異汗性湿疹という病気があります。これは手足の汗の貯留または刺激による湿疹皮膚炎で、水虫と同じように皮が剥けたり、痒くなったりします。
 これに使用するのは湿疹の薬で、水虫の薬を塗るとかえって悪くなる事もあるので鑑別は大事です。爪の水虫は、爪甲鉤爪彎症や厚硬爪甲といって、長年合わない靴をはいていた結果起きる爪の変形との鑑別が必要になります。ただし合併している事もあります。

治療

 足の水虫の場合、外用薬(塗り薬)が主役になります。剤型はクリーム、ローション、軟膏とありますが、医師はその時の症状によって最適な剤形を選択します。大体の薬は1日1回入浴後に塗るのが一番良いです。この時に症状がある場所だけ塗るのではなく、足の裏、指の間、足の外側と内側の縁まで広めに塗るのがコツです。足の甲は普通塗りませんが、医師の指示があったら外用してください。
 症状が良くなっても1〜2か月は塗り続ける事が大事です。
 爪の水虫の治療は大きく分けて外用薬と内服薬(飲み薬)があります。爪の症状と他に持病があって薬を飲んでいる等、患者さんの状況によってどちらを選択するかを医師が判断します。飲み合わせ等も考慮しますので、お薬手帳等を持参して頂くと良いでしょう。
 内服薬は有効成分が血液を通して爪まで運ばれて、爪の内側から効果を発揮します。外用薬は硬い爪に浸透しやすいように工夫された薬液で、爪の表面に塗る事により有効成分がゆっくりと爪の中や爪の裏まで浸透します。外用薬の先端が刷毛やラインマーカーの様になっていて、爪に塗りやすいように工夫されています。
 爪の伸びる速度は手の爪で1か月3mm、足の爪で1か月1.5mmです。なので足の爪の場合、完全に生え変わるには1年から1年半かかります。外用薬の場合は根気よくその間塗り続けて下さい。

 内服薬は色々種類がありますが、1日1カプセルを12週間だけ服用するタイプの薬も出て来ました。この場合12週間で爪が生え変わるのではなく、服用後も9か月から1年は経過観察が必要です。副作用として、胃腸症状や肝機能値の異常が起きる場合があります。副作用を未然に防ぐため、服用中に念のため血液検査を行う事もあります。

日常生活の注意

 足は常に清潔に保ち、毎日石鹸で指の間まで優しく丁寧に洗ってください。また毎日同じ靴を履かず、2〜3足を日替わりで履き替えて靴を乾燥させる時間を取って下さい。家族と同居している人は、他の人にうつさないようにお風呂場のバスマットやトイレのスリッパは共用しないようにしましょう。洗濯は一緒でも構いません。
 温泉やスポーツジム、ヨガやサウナに行った時は、家に帰ってからもう一度足だけ洗うと感染予防になります。
 しっかりケアして健康な爪や足を取り戻しましょう。


 
令和6年7月
マキ皮膚科クリニック(http://www.maki-derma.com/)
川名 万季
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