杉並区医師会は区民の皆様の健康の保持・向上を目的に、各種健診・休日診療・予防接種・講演会・児童生徒の健康管理・救急及び災害時医療・介護認定審査等の事業を行政(杉並区)とまさに車の両輪の関係で実施しています。
このコーナーでは、杉並区医師会が医療現場から得られた情報を基に医療の専門家としての対策を考え、その具現化した内容を医療情報として皆様に発信することを目的としています。
【第12回】マッサージの同意書の発行について[2020.10.2掲載]
区民の皆様から訪問マッサージや施術所における通所マッサージへの健康保険扱いに対する同意書の発行依頼が近年急増しております。
そこで私達医師の基本的な考え方をご説明して区民の皆様のご理解を賜りたいと存じます。
厚生労働省から医療機関及び保険医(*私達医師)への通達においては、療養費の支給対象(*健康保険の適用)となる適応症は一律にその診断名によることなく筋麻痺 関節拘縮等であって、医療上マッサージを必要とする症例です。
例えば、@筋麻痺 片麻痺に代表されるような麻痺の緩解措置(*改善を目的にしたもの)としての医療マッサージあるいはA関節拘縮や筋萎縮が起こりその制限されている関節可動域の拡大を促し症状の改善を図る変形矯正を目的とした医療マッサージなどが支給対象となります。また、脳出血による片麻痺、神経麻痺、神経痛など保険医の同意により必要性が認められた場合となります。
単に疲労回復や慰安を目的としたものや、疾病予防のマッサージ等は療養費の支給対象となりません。
と通達されております。
これに従いまして、私達は、
1、筋麻痺と関節拘縮等
2、骨折、脱臼はもとより脳出血による片麻痺、神経麻痺、神経痛等
上記症状を認めた場合のみ健康保険扱いでの施術に同意することになります。
疲労回復や慰安、疾病の予防(*単なる老化による筋力低下、歩行困難、寝たきり状態への予防)他、症例によっては療養費の支給対象であると同意しかねるケースもございます。
是非ご理解賜りますようお願い申し上げます。
本文中 厚生労働省からの引用部分
太字での表記 アンダーライン表記は筆者による
(*)は筆者による加筆
高齢の父が老人施設に入所しています。老化による筋力低下があります。
このままでは寝たきりになってしまうのでマッサージを受けさせたいのですが、施術所の方からは医師の同意書が必要だと言われました。
入所施設に定期的にお見えになる医師に相談しましたところ同意書の発行を断られてしまいました。
父もマッサージを受けたいと意欲的なのですが何故お医者さんは同意書を発行してくれないのですか?
このようなケース、医師会としてどのようにお考えでしょうか?
恐らく、そのお医者さんは施術を受ける事自体を否定してはいないのではないでしょうか。
同意書の発行をお断りになった根拠は、お父様のご様子が厚生労働省が示す療養費の支給対象に当たらないと判断された可能性があります。
筋力低下があっても筋麻痺や筋萎縮が無い単なる老化によるものや、寝たきり予防目的と医師が判断した場合は同意書の発行をお断りすることがあります。
同意書の発行は各医師の裁量によっておこなわれるもので、医師会が同意書の発行を行わないようにと指示していることはありません。