どうなっているの?杉並の医療

杉並区医師会は区民の皆様の健康の保持・向上を目的に、各種健診・休日診療・予防接種・講演会・児童生徒の健康管理・救急及び災害時医療・介護認定審査等の事業を行政(杉並区)とまさに車の両輪の関係で実施しています。
このコーナーでは、杉並区医師会が医療現場から得られた情報を基に医療の専門家としての対策を考え、その具現化した内容を医療情報として皆様に発信することを目的としています。

【第4回】杉並区区民健康診査・特定健診について [2011.07.15掲載]

杉並区医師会の各医療機関では杉並区より委託を受け、区民の皆さまの健康診断を行っています。
健診対象者、健診内容、申込方法などは 健診・検診のページ および 杉並区役所のホー ムページ をごらんください。

Q1.
区民健診で何がわかりますか? どんな病気がみつかりますか?

杉並区区民健診の検査項目で病気(可能性も含め)を数値や画像の異常で知らせてくれる検査と対象疾患はおおまかに以下のようになります。
 
<身体計測>   ⇒ 肥満、痩せすぎなど

<血圧測定>   ⇒ 高血圧症、低血圧症など

<血液検査>
・血球検査(赤血球数、白血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット)⇒ 貧血の有無、血液疾患など
・AST、ALT、γGTP      ⇒ 肝炎、脂肪肝、アルコール性肝障害など
・LDL、HDL、中性脂肪     ⇒ 脂質異常症、糖尿病など
・血糖値、ヘモグロビンA1c  ⇒ 糖尿病など
・クレアチニン、尿酸値    ⇒ 腎臓疾患、痛風など

<尿検査>    ⇒ 腎・泌尿器系疾患、高血圧性腎障害、糖尿病性腎障害など

<心電図検査>  ⇒ 心疾患、不整脈など

<胸部X線検査> ⇒ 呼吸器疾患(肺炎、結核、肺がんなど)、心疾患、胸部大血管疾患、胸部の腫瘍、脊椎疾患、その他

ひとつの検査が必ずしもひとつの病気と結びついているわけではなく、数値が基準値をはみ出すことが全て病気とはいえません。
検査の数値は病気の可能性を警告するサイン、病気を映し出す影絵とも考えられます。

健診の検査結果からダイレクトに診断できるのは、「高血圧症」「脂質異常症」「糖尿病」です。
これらは無症状に始まり、静かに動脈硬化を進行させて、死因としても高度障害の原因としても大きな比率を占める「虚血性心疾患」「脳血管障害」や「認知症」を引き起こします。
現在行われている区民健診(国の方策による特定健診)の一番の目的はこの三疾患の拾い上げ、早期発見と早期の治療介入にあるのです。

しかし、検査の数値や結果以上に重要なのが、実は医師が診察して確認する身体所見です。
実際に、検査項目には無い甲状腺疾患や腹部動脈りゅう、脊髄・神経疾患などが健診で発見されることも有ります。
私たち医師は、見たり(視診)聞いたり(聴診)触れたり(触診)して、身体のわずかな変化からも病気の兆候を見逃さないように努めて健診を行っています。

Q2.
区民健診で「がん」は発見されますか?

現在行われている区民健診(特定健診)はA1に示したように、「高血圧症」「脂質異常症」「糖尿病」の発見とその対策を主な目的としています。
検査内容も、これらの疾患についてはかなり精度が高いと言っていいでしょう。

一方、「がん」という病気は発生する臓器によっても異なりますが、初期の段階では血液一般検査で異常が認められることは少なく、早期発見には画像診断検査や特殊な検査を行う必要があります。
(便潜血検査による大腸がん検診や採血による前立腺がん検診、肝臓がんのハイリスク者を発見できる肝炎ウィルス検査は区民健診と同時実施が可能です。その他、杉並区医師会の医療機関では杉並区胃がん検診、肺がん検診、乳がん検診、子宮がん検診を実施していますのでぜひご利用ください。)

しかし、担当医が健診中に視診、触診でがんの兆候を発見したり、胸部X線検査で肺がんをはじめとする胸部の腫瘍がみつかる場合もあり、区民健診ががんを発見するのに全く無力というわけではありません。
心配なことや気になる症状が有る場合は、遠慮なく担当医にお尋ねください。

Q3.
区民健診の結果は送られてきますか?
その結果をどのように活用すればいいですか?

 健診の結果は受診した医療機関に再診していただいてお渡し致します。
 検査結果の数値だけでなく、診察結果も合わせた総合的な判断をていねいに説明致します。
 検査によっては結果が出るまで時間を要することもありますので、再診日は各医療機関にお尋ねください。
 また、連携医療機関で眼底検査を受ける場合は、眼科の結果も合わせて結果説明致します。
 内科健診日から2週間以内に眼科を受診していただくようお願い致します。
 健診後に1ヵ月以上も再診ができない場合、郵送などを希望する場合は受診した医療機関にご連絡ください。

 健診結果からは、主として日本人の死因の2/3を占める脳血管障害、心疾患の素地となる「高血圧症」「脂質異常症」「糖尿病」について、自分の身体の現状を知ることができます。
 これらの疾患は生活習慣病と呼ばれ、発症には遺伝的体質以外の生活習慣、すなわ「食事」「運動習慣」「嗜好品」などが大きく関わっています。
 現在セーフであっても、健診結果を参考に生活習慣の問題点を意識し改善することが、将来の病気を予防するポイントとなります。
 もし検査値の異常があるなら、そのまま放置しないで一定期間をおいて再検査を受けましょう。

Q4.
区民健診は毎年受ける必要がありますか?

 人は皆、毎日新陳代謝を繰り返しています。
良くも悪くも日々変わっていくのが生きているということ、ひとつ歳をとるたびに身体検査するのも良い記念になると思いませんか?

1年毎は自覚症状が無く健康状態の良い場合の目安です。
病気になりやすいリスクを抱えていたり、自覚症状が有る場合は躊躇せず医師にご相談ください。


↑ページの一番上へ